The Fortune at the Bottom of the Pyramid

The Fortune at the Bottom of the Pyramid

発想の転換!

発想の転換である。世界から見捨てられた貧しい人々を対象としたビジネスをしようとう話である。サブタイトルにある様に、貧しい人々を経済活動の中に取り入れることで、彼らは仕事から収入を得て、貧困から立ち上がることができると言うものである。金持ちの寄付金や政府の助成金では貧困にあえぐ人々を救うことは出来ないと主張する。著者、C. K. Prahalad は、一日当たりの収入が$2に満たない人々を貧困層と定義する。この貧困層が地球上に40億人とも50億人がいると言われ、人類の約75%を占めていることになる。正に数を武器とする眠れる市場である。 ベルリンの壁崩壊後、急速に加速するヨーロッパの統合は、ヨーロッパユニオン(EU)がGDPで欧州平均を下回る国々の統合を進めている。そして、ロシア、中国、インド、ブラジルの各国は経済大国への道を確実に歩み出している。高品質の製品とサービスで付加価値の高いビジネスを得意とする日本のビジネスパーソンにとって理解しがたい話と受け取れるかも知れない。しかし、貧困層との取り組みは世界の潮流である。 本書は、ミシガン大学の学生によるケース分析をまとめたもので、バランスを欠き冗長になってしまっている。しかし、貧困層の消費動向の分析し、この市場で求められる技術革新を説くところは説得力を持ち、この市場をターゲットとした、製品、サービス、ビジネスモデル、管理プロセス全てに革新が必要であると主張する。そして、貧困社会に富を生産する生態系を作り上げるための、個人企業、大企業、多国籍企業、公共機関、そして政府の役割を議論し、生態系を維持するための業務管理能力と汚職の絶滅が不可欠であるとまとめている。 中国とインドの違いを引用して、経済構造とシステムが急速に変化するビジネスを活性化するには、素早い立法と明確な法の施行が求められ、その時々で、法の解釈が変更されたり、法の施行に手心が加えられるようなマイクロレグレーション(microregulation)があってはならないと力説しているが、日本人にも耳の痛い話である。 第二部では、インドなど開発途上国で既に始められている12のビジネスケースを解説し、第三部としてCDに納められたビデオでケースを紹介している。ヨウ素酸塩を添加した食塩を販売するAnnapurna社。PC Kioskを使い、インターネットを通してシカゴ商品取引所の小麦価格を調べ小麦の販売価格を決定する農民を束ねるITC e-Choupal社。使い捨てパッケージ・シャンプーを販売するHindustan Lever Ltd社。高性能で丈夫な義肢を$30で製造販売するJaipur Foot。マクドナルドで販売される品質一定なハンバーガーにヒントを得て、$50から$300で最先端の白内障手術を行うAravind Eye Hospital には白内障手術に英国からも患者がやって来るという。また、ヒラリークリントンがしばしば引用する、「貧困層で喘ぐ女性が、銀行から少しばかりの融資を得られたことで、仕事を活性化させて独立していく女性の姿にダイナミズムを覚える」と言う話は、ノーベル平和賞を2006年に受賞したバングラディッシュのグラミン銀行のモデルをインドで展開する CICIC Bank のケースである。ビジネスケースは詳細に解説がなされ、これからのビジネスのヒントになることは請け合いである。