五重塔 (岩波文庫)

五重塔 (岩波文庫)

圧倒的な言葉の構築力

 五重塔の建立を任されることになった「のっそり」十兵衛の妥協のない一途な意志と、作者露伴の作品構築への漲るような意志がシンクロして物語りはハイテンションで進む。才能はあるもののうだつの上がらない仲間の評判もイマイチの十兵衛がリベンジすべく、一世一代の起死回生の大勝負に出る。しかしその行く手を阻む棟梁の源太との熾烈な駆け引きが繰り広げられる。命を下す感応寺大上人の深謀遠慮の采配とその行方、互いの妻の心的葛藤、火花を散らせる二人の矜持、義侠心、友情、謙譲、崇敬、畏怖、復讐、憐憫、恩義、同情、嫉妬等々といったありとあらゆる物語的パッションが縦横に炸裂する。ドラマは否が応でも盛り上がる。一旦物語に引き込まれてしまった読者はこの蜘蛛の巣から逃れることはほとんど不可能にちかい。しかしこの作品は、イメージの安易な造形に頼る小説ではない、あくまで言葉の構築力、つむぐ力が何にもまして圧倒的なのだ。ドストエフスキーばりの、露伴に憑依したかのようなドライヴのかかった登場人物の語りの饒舌と臨場感溢れる訴求力に息を呑む。あたかも十兵衛が柱に心血を注いで鉋をかけるように露伴は言葉に繊細な鉋をかける。映画化を嫌った露伴にとって言葉は命にほかならなかった。十兵衛の五重塔の完成が言葉の構築つまり作品としての五重塔の完成なのだ。それをこそ露伴は己に課した。露伴二十四歳の偉業である。突然の嵐にも倒壊しない自信をもって構築された「五重塔」が永遠に文学史に屹立することは疑いようがない。でも評価としては三星かな。晩年の作品の膂力に比べると力を意識しすぎた

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