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花闇 (集英社文庫)

花闇 (集英社文庫)

美しいものが壊れていく美しさ

弟子の三すじの視線で綴る、三世澤村田之助の生涯。 読みながら私は、彼らと共に江戸の町で生きている様に感じていました。私も三すじと同じく、田之助の放つ毒を含ませた美酒の様な魅力にあてられたのです。読み終えた今もずっと。田之助は我儘で傲岸で、それでいて何よりも凜と美しい。足を失っても、尚。 猥雑で卑しいとされていた、庶民の最高の娯楽であった江戸の舞台。そこで生き、朽ちていく役者達。華やかさ、虚しさ、堕ちていく闇の中張り詰めた心。それでも未だ眩い舞台…。粋で色っぽくて哀しくて。 美しいものが壊れる姿は、切なさが加わる分更に美しく、自分でも意識していなかった残酷な心が惹かれてやまないのです。簡潔に述べます。私はこの本を読みながら三すじであり、心底田之助に惚れ、江戸の舞台に取り憑かれてしまった様です。