霧の旗 (新潮文庫)

霧の旗 (新潮文庫)

復讐の黒い矢を放つ柳田桐子という女が忘れられない

 弁護を断られたために、無実の罪を負って兄が獄死したと信じる女が、弁護の依頼を断った高名な弁護士に復讐するサスペンス小説。  情に流されず、毅然として復讐していく柳田桐子(きりこ)の姿が、鮮やかに瞼に焼きつきました。暗い影を帯びた魅力的な女性が登場する作者の小説のなかでも、柳田桐子は、強い印象を残す女性ですね。芯の強い性格。きっぱりとした物言い。兄の無念を晴らす復讐の女を描いた清張の人物造型力が見事。  後味は決してよくありませんが、ラスト一行の切れ味のよさには唸りました。  1959年(昭和34年)から1960年にかけて、『婦人公論』誌に連載された作品。脂の乗り切った当時の清張作品では、『黒い画集』『影の地帯』『砂の器』といった小説、『日本の黒い霧』のノンフィクションとともに忘れられません。