銀嶺の人 下    新潮文庫 に 2-18

銀嶺の人 下  新潮文庫 に 2-18

一瞬、普遍で本質的なものを捉えることができた人々の物語

三部作のうち、モデルであるご本人たち(の一部)が今も社会的に活躍されているのはこの「銀嶺の人」だけである。ご本人たちは確かに、女性の仕事・職場といった面で大きな功績を、この本に書かれた物語の後も残されている。 しかし、私としては、この本はそのような、仕事を持つ女性・強い女性の物語として読みたくはない。対照的な性格(と仕事)を持つ二人の女性が、同質の目標をほんの一瞬だけ持ちえた、奇跡の物語として読みたい。そうでないと、佐久間をはじめ、物語に登場する必要のなくなってしまう人々が大勢いる。 また、そのような目標として可能なものはとても少ないことにも注意したい。世の中の趣味と呼ばれているものの中で、おおよそ、その趣味の持ち主の属性と無縁でいられるものは数すくないのだから。