山中静夫氏の尊厳死 (文春文庫)

山中静夫氏の尊厳死 (文春文庫)

誰にでもおすすめというわけではないが

表題作は末期患者と医師とのやりとりを通して、それぞれの家族を含めた心の葛藤を静かに淡々と綴られている。私も数年前に父を肺癌で亡くしているが、読みながらいろんなことを思い起こさせられた。当時医者とは冷たいものだと思ったが、医者には医者のいろんな事情があるのだということがわかった。作品の中の患者や医師の心情や機微の記述は実際に医療現場に携わる作者ならではだろう。それはおそらく作者の仕事のスタンスでもあるのだろう。それぞれの登場人物に対する作者の暖かなまなざしが感じられ、作品を救いのあるものにしている。