それは違う! (文春文庫)

それは違う! (文春文庫)

科学的・理論的に考えることの重要性

客観的事実よりもセンセーショナルなネタを好むのは、日本のマスコミの悪しき体質ですが、気が付くといつの間にかうやむやになって、本書の内容のように、「一体あれどうなったのか?」と思える事が多々あります。「買ってはいけない」の根拠なき煽動論調は、今になってはお笑い種です。しかし、私自身も大学の始めまで「ダイオキシン猛毒説」や「環境ホルモンで精子減少」を頭から信じ込み、本書で槍玉に挙げられている三好氏の著書を多数読んでいたので、あまり偉そうなことは言えないのですが。「買ってはいけない」の論調は終始一貫、「化学物質は怖い」という類のアジテーションに尽きます。しかしいかなる化学物質であれ、100%安全でもなければ危険でもない。至極当前ですが、私自身もかつてはこの当前の認識ができませんでした。化学物質が安全かどうかは、量とバランスで決まることを本書は丁寧に教えてくれます。例えば、フルーツインゼリーの危険性について、「誰がカラギーナンを15%も摂取するのか。フルーツインゼリーには0.2%しか含まれていない。75個も食べれば食べすぎで死んでしまう」という、目から鱗が何十枚も落ちる指摘が為されています。数字や客観的データを重視する本書は、環境論の暴走に警鐘を鳴らすものと言えます。「買ってはいけない」に限らず、「ベストセラー」や「専門家」といった肩書きだけに踊らされる傾向が、私を含め多くの人にはあります。まして環境問題となると尚更です。しかし重要なのは、その主張は科学的・理論的に正しい根拠に基づいているかどうか、常に自分の頭で多角的に考えることでしょう。そうした認識をさせてくれる点で、「買ってはいけない」とほぼ同時期に出版された本書は、大いに示唆に富んでいると思います。環境問題に関心を持つ人にこそ、本書は是非熟読して頂きたい一冊です。