マリ&フィフィの虐殺ソングブック (河出文庫―文芸コレクション)

マリ&フィフィの虐殺ソングブック (河出文庫―文芸コレクション)

<物語>の爆殺。

 恰も檻の中の獣が格子の隙間からウンコ投げつけるような乱暴さで書き殴られた掌編が、このようなポエジーを醸し出すとは……。  この本に所謂「小説」を求めるな。「小説的なるもの」という構築物が横っ腹に意味不明な突撃をブチ込まれたその残骸を見に行くつもりでページを繰らねばならぬのです、良くも悪くも。  個人的には、エリック・サティの、いかにも鍵盤の上で手が軟体動物的にふらふらと指を落としていそうな類いのピアノ曲や、R.バルトのサイ・トゥオンブリ論での、力の抜けた筆致への礼賛を知った時にも相当する、風穴の開きようを感じた。つまり、「ちゃんとやろう」と思うのは、形式に束縛される事による、己の正直かつナマな身体性の抑圧に過ぎぬという事…。  加えて中原的言語には、沸騰して噴水しているのか微温湯にふやけて浸かっているのか迷わせるような独得の温度がある。時にはへらへらと酔拳の如く、時には間寛平演じるジジィが「止まったら死ぬんじゃ」と杖を振りまくる狂態の如く。