ザ・フィンランド・システム―日本ビジネス再生の鍵は、フィンランド(世界競争力1位)にある

ザ・フィンランド・システム―日本ビジネス再生の鍵は、フィンランド(世界競争力1位)にある

タイトルにだまされることなく、資料として

題名といい、エディターのレビューといい、この本はフィンランドの競争力について多面的に捉えているという印象を与えるが、実際にはこの競争力の1つの源泉であるベンチャー創出の土壌に焦点が当たっている。別の言い方をすれば、有名なフィンランドの教育についてはほとんど記述はないので、ここを期待されている方は別の書を選んだほうがよいだろう。 このベンチャー創出の土壌について、構造的に、そして具体例を織り交ぜながら述べているのは和書では稀有といえるが、これに対する分析のレベルが高いとはいえない。例えば、フィンランドの起業家達には、IPOで大儲けしてやろうというアメリカのアントレ的な発想は薄く、小国フィンランドの名を世界にとどろかしてやりたいという願望が強い、という話がでてくるが、このモチベーションはどこから来て、それがフィンランド経済がグローバルな資本主義にどっぷり飲み込まれても続くのかどうかという、致命的な問題について著者なりの分析をするべきである。また、後半の各企業の紹介は冗長なインタビュー形式で書かれており、字数稼ぎとしか思えない。これら一連のインタビューをまとめて帰納的に本編をサポートすることもできたはずだ。 繰り返しになるが、本書は情報としては貴重だが、著者なりの分析・見解を述べるには至っていない。つまり、この本は優秀な資料にはなるが、そこから先の結論は自分の知識と経験に基づいて出す必要がある、ということを認識されたい。