忍びと忍術 (江戸時代選書)

忍びと忍術 (江戸時代選書)

忍術は科学だ

 本書は、忍者の起源から没落までをわかりやすく解説している。  郷土史研究家らしいやり方で、文献を丹念に読解している。忍者に関するエピソードも豊富である。  本書は1964年に書き上げられたもので、40年以上前のものであるが、その価値は古びていない。 ●忍者の発生  戦国時代に、流民である侍くずれや山賊・野盗の出である素波(スッパ)が現れた。秘密をもらすことを「スッパぬく」というが、この語源がスッパである。  戦国大名たちは、非常に備えるためスッパたちを召し抱えたり、臨時で雇った。諜報活動と奇襲作戦に大きな働きをした。こうして訓練された忍者が出現する。  戦国末期の鈴鹿山系の両翼にまたがる伊賀・甲賀地方は、どの大名の支配を受けない政治的空白地であった。その地で、山岳ゲリラ戦術(独特の奇襲戦法)が発達し、それが忍術の原形となった。 ●忍術は科学である 「忍びには身のはたらきはあらずとも 眼(まなこ)のきくを肝要とせよ」 という忍歌にあるように、たとえ体術の鍛錬は不十分であっても、深い観察による行動を最も重要とする。  忍術の極意は、超人のようなアクションよりも、冷徹な観察力である。  忍学においては天地自然の現象、動と静、一切を含めた現象に対する観察と応用を学習する。 ●忍者装束のルーツは根来衆?  僧兵の勢威日本一と誇称した紀州の根来寺(ねごろじ)を、豊臣秀吉が1585年焼き打ちにした。  僧兵は山中を流浪して武技を練り根来流忍術を編み出した。彼らは僧俗兼用の黒衣をまとい、眼だけ出して頭巾をかぶっていた。これが忍者装束の原型となったのではないか。