反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書

反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書

その手があったか!

キリスト原理主義者による暴論へのアンチテーゼとして、ボビー・ヘンダーソンが記した書。この世は知的想像主である『空飛ぶスパゲテイーモンスター(スパモン)』が5000年前に創造し、人類の祖先は海賊だったとする新興宗教(スパモン教)としての自説を展開する書。ただし海賊は残虐な略奪者だったというのは誤りであるとしている。 それだけ見ればナンセンスなアメリカンジョークもののトンデモ本としか思えないが、本書を出版する経緯が前書きに記されている。米国では進化論を信じないキリスト原理主義者によって『世界は知的創造主によって造られた』とするID理論を本気で学校教育に導入している動き(しかも大統領まで賛成している)があり、これに対抗する手段として立ち上がったのが著者のボビー・ヘンダーソンである。 ID論者の主張は科学というよりは単なる屁理屈なのだが、逆に進化論を主張する科学者がどうまじめに議論しても説得不可能である。そこで著者は『ID理論よりも筋が通っている屁理屈理論で、なおかつID論者が絶対に納得できないような創造主をもちだす』作戦を用い、『IDを教科書に載せるのならば、もっと筋の通ったスパモンも載せるべきだ』と世間に主張したらしいのである。なるほど、話の通じない相手にはその手があったかと感心した。『これが否定できないのなら、この説は正しい』というID論同様の屁理屈論理であるから、『現代科学では検知できないスパモンを否定できない以上、これは正しい』と言っているので、ID論を認めるのであればスパモンも認めなければならなくなるのである。オッカムの剃刀に対抗できるのはオッカムの剃刀であることを示したのはまさにコロンブスの卵だ。しかも、なんだかんだ言って殺戮を冒す他の宗教と異なり、スパモン教は殺人が起こった記録は一度もないという平和な宗教である。しかもスパモン教は豪華な教会など不要で、布教なんかよりもまっとうな生き方を説いており、明らかに他の宗教で行き過ぎた面を暗に批判している点で、安心して入信できるようになっている。 Jブッシュがチンパンジーにそっくりであることから、進化論にも一理ある(笑)。しかし、実際の内容は単なるアメリカンジョークの連発で、笑えるものもあるが、面白くないものも多い。また訳者も一緒になって遊んでいるところもあるが、もう少し意訳したほうがいいのではと思う部分も多かった。 個人的には好きなジャンルで、著者の意向には100%共感するが、他人(日本人)に本書を買うように勧められるかと言うと、面白くない部分も多いのでちょっと戸惑う。で、厳しいかもしれないが星3つにした。