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はさんではさんで

はさんではさんで

「でもまだちょっといける」という気持ち

“坊ちゃん文学賞”大賞受賞作ということで。 瀬尾さんがここから出たことをちらっと思って、少しばかりの期待。 二編収められている。行間もゆるりとしているし、紙面も白い印象だが、 文章のセンテンスは短く、テンポもいい。 性に関するトラウマを抱えた二人の男女。恋人ではなく友人という建前で つきあいは続く。“役割”にも似た関係から脱却できない二人。 語り手は女子大生、タロウ。唯一の友人貴之に想いを寄せているのだが、 二人のつきあいがトラウマの告白から始まっただけに、貴之にもう一歩を 踏み出してゆけない。 期待はずれの大学での日々とともに、タロウの煩悶が深まる。 自傷行為……の範疇に入る行動を繰り返して、束の間の自己覚醒をはかる。 体の痛みが心の痛み。貴之への気持ちをぶつけられない苛立ち。 別の人とつきあいかけても、心は止まらない。 ラスト、精一杯のつながりを求めて「いいからはさんで」と貴之に迫るタロウは屈折していて、でもいじらしいなあ。 もう一編の「コンビニエンス・ヒーロー」も、モラトリアムを意識しつつ、 自分の“役割”を打ち立て、またそれを打破しようとする大学生、楽(らく)の日々を描く。 会話が生きている。生活のなかに垣間見える人の立場と思いの落差みたいなものも ちゃんと掬いとっていておもしろく読んだ。