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タタール人の砂漠 (イタリア叢書)
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砂漠の向こうには
自分の人生は、ほかとは違って特別なものであり、「何かが起こる」のではないかと想像するのは、多くの人に覚えのあることではないだろうか。 私も小さい時分、いつか目の前に宇宙人が現れるとか、魔法が使えるようになりたいとか、そんなたわいもないことを夢見ていたのを思い出す。 砦の守り手は、北の砂漠、「タタール人の砂漠」がその対象で、恐怖と好奇の入り混じった視線で見つめていた。 この物語は、砂漠が舞台でありながら、ほとんど「乾き」を感じさせない。 むしろ、水のしたたる音や風のうなり声、霧にかすむ山々は、静かで少し湿り気のある風景を思い起こさせる。 砂漠が「孤独」の舞台であるのは、いささか安易にすぎるかと思う部分もあるが、風のうなり声を部下の口笛と聞き間違える場面、母親が自分の足音で目を覚まさない場面など、ブッツァーティらしい幻想に満ちた孤独の描写はさすがである。 砂漠の向こうには、夢をかなえる何かがあって、時間という貴重な財産をすべて賭けてそれを心待ちにする。 いずれそれはやってくるのだけれど、やってきた時にはもう遅い。 人生の中で感じずにはいられない「死」と「孤独」の雫を、砂漠の砂でろ過して抽出したような作品。 現実にはほぼ何も起こっていないのに、それでも先へ先へと読み進めたくなる。良作。












