A Farewell to Kings

A Farewell to Kings

ラッシュ最高傑作のひとつ

第2期というのか、ラッシュが最もプログレに接近した70年代後半の傑作群のうちのひとつ。 曲数こそ少ないが、どれもこれもが凝ったアンサンブルを聴かせる、充実度抜群の1枚だ。 編成はギター、ベース、ドラムスに加えて、モノ(単音)シンセ、チュブラーベルなどのパーカッション類を導入しており、たった3人とは思えない壮大なスケールのサウンドを作り出している(勿論、シーケンサーなどまだ普及していない時代である)。 特に素晴らしいのは「Xanadu」(ザナドゥ)だろう。これはイギリスの詩人コールリッジの代表作「クーブラ・カーン」に依拠したもので、歌詞の内容はコールリッジの詩をほぼそのままなぞっている。 この詩は勿論モンゴルの大ハーン・フビライと、彼が上都(ザナドゥ)に築いたと言われる歓楽宮についてのものだが、当時コールリッジに東洋に関する正確な知識があったわけではなく、殆どの内容が彼の創作、というより一種のファンタジーだと思って良い。 これをカナダ人のラッシュがどう料理したか、と言えば、あえてモンゴル風の音楽もイギリス風の音楽も用いずに、「どことなく東洋風の無国籍サウンド」で表現しており、これが成功している。「西洋人の考える東洋幻想」なのだから、このくらいが丁度良い。 音楽面では、静から動へ、動から静への変化が素晴らしく、単純な8ビートの連続などは殆どない。まるでミュージカルの音楽か、交響曲のような劇的な展開の連続である。 敢えて近いサウンドを挙げるなら、初期クイーンとイエスだろう。ドラマティックな音楽が好きな人には、ぜひおすすめしたいアルバムだ。