小津安二郎 DVD-BOX 第一集

小津安二郎 DVD-BOX 第一集

秋日和の「ねえ、そろそろよ」

 丸の内のオフィスで、岡田茉莉子と司葉子が並んで仕事をしています。 司葉子が腕時計をのぞきこみ、隣の岡田茉莉子に、「ねえ、そろそろよ」 と声をかけます。それは、ささやくような、とても魅力的な声です。  この後二人は、秋日和の屋上にのぼり、同僚の女友達が新婚旅行に出 かける列車を待ち合わせ、走ってきた列車に手を振りますが、女友達が 約束通り花束を振ってくれないので、「女の友情ってこんなものかしら」 と二人で寂しそうに職場に戻ります。  この挿話を含め、屋上のシーンは全部で三つあります。最初のシーン では、司葉子と岡田茉莉子の動作が不自然なまでにシンクロナイズして います。屋上の手前にはベンチが二つ向いあわせに置かれています。空 には赤いアドバルーンが二つ浮かんでいます。列車と都電が並行に走っ ていきます。  二番目のシーンでは、人はたくさんいますが、司葉子は一人で孤独に 立っています。列車の走行は、同じように画面に示され、アドバルーン も相変わらず、二つあがっています。手前の椅子には左に女二人、右側 に女二人が座っています。このシーンでは、司葉子は一人で立っている のですが、外界の表情はそれほど変化しているとは言えません。  最後のシーンでは、岡田茉莉子が渡辺文雄と並んで立っています。こ のとき、列車の走行は示されませんし、アドバルーンも一つしか浮かん でいません。手前の向かい合ったベンチにも、左に男が二人、右に男が 一人です。渡辺文雄がまずバトミントンのシャトルを投げ返し、次に岡 田茉莉子がボールを投げ返すという交互の動作は、最初のシーンのそれ とは明らかに違います。  このことから、「司葉子は周囲をシンクロナイズさせる存在である」と 考えることができます。それは、宿屋のシーンで、背景に見えている部屋 のあかりが消えて、障子が閉まるタイミングと、司葉子の修学旅行発言が、 嘘でしょうといいたくなるくらいシンクロしていることからも、ほぼ確実 です。  二番目のシーンで、司葉子は屋上に一人で立っていますが、この直後、 ラーメン屋の狭いカウンターで、司葉子が、佐田啓二と一緒に並んで、 ラーメンを食べるアクションは、第一のアクションと同じ質です。  こうして、屋上のシーンとラーメンを食べるシーンの結びつきがわか ると、『秋日和』後半の原節子と司葉子が「ゆで小豆」を食べて、窓か ら山の方を母娘で一緒に見つめるシーンが少しわかってきます。司葉子 が窓の方を振り向いたとき、彼女は何をシンクロさせたのでしょうか。 そう、それは、あの列車の走行と船の滑走です。

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2008年03月01日 15時09分 / 優柔不断な読書日記 mental2.blog109.fc2.com
ライブ行く前に小津
小津安二郎 DVD-BOX 第一集(2003/09/25)笠智衆、佐分利信 他商品詳細を見る『お早よう』を観る。戦後の牧歌的な日本の原風景と日常にある、よしなし事をつづった作品。風景と色彩がとてもきれい。おもしろかった。笠 ...
2007年08月14日 15時09分 / Cinema Kingdom Blog gank2o.blog5.fc2.com
蓼科・小津安二郎記念館に寄って
先日信州に出掛けた際に 蓼科温泉を走っていると「小津安二郎記念館」 なる、小さな看板を偶然発見しました。 気になって寄り道してみると、 垣根の奥に、一見真新しい、茅葺き屋根の 日本家屋が建っていました。 ...