水の迷宮 (カッパノベルス)

水の迷宮 (カッパノベルス)

ミステリーの舞台は水族館

 謎解きの円環がきれいに閉じています。少しずつ真実が解きほぐされていくので、大どんでん返しのような劇性はありませんが、論理的な清潔さでミステリーを楽しむ人には何の不足も感じないでしょう。  ただ、なぞが解けたあとのラストが、ちょっとキレイ過ぎる。…そう見る向きもきっとあるでしょう。だって人が殺されてるのに…というわけです。  舞台は水族館。背景に広がるのは透明な水で満たされた巨大な水槽と世界中から集められた魚たち。銀の鱗をきらめかせたり、グロテスクな口をパクつかせたり、身近なものから珍しいものまで、多種多様な海洋生物がいつも周りを囲んでいます。そして殺人事件など思いもよらず、水槽に見入る親子連れや恋人たち。…この幻想的、非日常的な空間のイメージが、謎解きの論理性と絶妙な対照をなしています。突然の脅迫メールによって館員たちは館内を右往左往しますが、その時も常に彼らの周りには水槽の水がゆらめき、魚たちは事件など関係なく、いつもと同じように水の中を泳いでいるのです。  ミステリーとして上質なものを作り上げる一方、描かれてきたこのような舞台のイメージ(登場人物も総じていい人ぞろい)は最後まで壊さない、と作者は考えたのではないでしょうか。だから作者は、この物語の結びを描くに当たって、あえて予定調和を破らない、むしろ夢の水族館の実現へと舵を取った気がします。  謎解きをするのが刑事でも探偵でもなく、聡明すぎる一般人なのは、この作者のいつものやり方。その一人飛び抜けた聡明さに不自然があるとしても、警察的科学捜査のないところに謎解きの面白さを見出すのが、この作者のこだわりなのではないでしょうか。  最後に、この小説、映画にしたらいいのでは、とも思った次第。

FC2違若吟若ャ

2007綛0610 1520 / 蓮城龍樹 darkmoonpalace.blog70.fc2.com
5剛賢5
5/27-6/6水族館で起こる事件を巡って、個々の思惑が交錯する。トリックや事件の犯人は容易に想像が付きましたが、背景にある壮大な想いには感動しました。是非こんな水族館を実際に観てみたいです。