幻獣遁走曲 (創元推理文庫)

幻獣遁走曲 (創元推理文庫)

ほんわかミステリ

 初めて読んだ猫丸先輩の作品なのですが、前作を読んでいなくてもなんら問題はありませんでした。短編5つが収録されていますが、どこから読んでも大丈夫。  この猫丸先輩、なんともいえず愉快なキャラクターです。初対面の人には、「この人、ちょっと足りないんじゃないか?」と思わせるような、言動と行動。それが、ひとたび”事件”が起こると、名探偵に変身してしまいます。  ここに出てくる謎は、誰が殺したとか、そういったものではなく、いわゆる日常の謎。結果が分かってしまうとなあんだ、そんなことか、と思うようなことだけれど、みんな答えがわからなくてイライラ、おろおろする様子がおもしろい。この謎を解けるのは、やはり猫丸先輩だからでしょう。彼が追求するのは「おもしろさ」。自分の興味の赴くままにいろんなことに首をつっこんでいる。だからきっと、既成概念にとらわれないんでしょう。  なにか”事件”が起きると、普通の人は「誰がやったんだ」とまず考える。それから「どうして(そんなことを)やったんだ」となる。そのとき人は、そこに”悪意”を見いだそうとします。そしてついつい、”犯人探し”のようなことになってしまう。しかしそこで、いやいや、そんなことじゃないんだよ、と事件全体を単純に解明してくれるのが猫丸先輩です。  彼のような生き方をしているからこそ、これらの謎が解けるのだと思います。私たちのように「世間の常識」にとらわれていると、見えるものも見えなくなってしまうんですね。かといって、なんでもかんでも善意にとらえるのではなく、事実をありのままに解明する猫丸先輩の謎解きに共感できます。  肩が凝らずに読める、楽しいミステリです。他の作品も読んでみたくなりました。

≪ゃ荐篋

2008年06月18日 18時39分 / 風来坊楽観日記 rfbluetail.blog112.fc2.com
幻獣遁走曲   倉知淳
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