真理の傍ら
真っ先に思い浮かぶのは
「奇麗事ですね」
という あの人の目
「あなた方の口になさることは」
甘くて 非合理で
非現実で 不条理だ
と 汚いものを見るかのように 溜息をつく
それこそが 詩人です
詩人という 生き物です
具体的で合理的 衛生的で世界的
そんな視野を持たないし
言葉もろくに知らないせいで
ぬけぬけと のうのうと 人を活かす毒を吐く
あなた方こそ害悪です
あなた方こそ罪悪です
よくもそんなことを恥ずかしげもなく
一瞬も怯むことなくして 口に出来たものだ
ほうら 頭を冷やして
あの人が疲れた顔をしている
「もしあなた方が あなた方のすべてをもって」
それを肯定できるというなら
少しは感心しないでもありません けれど
一度だってないでしょう
「あなた方のいうことを正しいとするならば」
「私は正気を疑います」
しかしいかんせん あなた方詩人というものは
何がいかにしていかなるふうに
正しきを正しからずとし正しく正せられることすら
言葉で弄くってしまうから それでは野放しにされてしまう
あの人はとびきり眉をひそめて 嫌悪の相をつくります
「狂気の信仰をおやめなさい」
すべての話はそこからです まだ始まってすらいない
できることならばその薄汚い唇を縫ってさしあげたいよ
詩人にはあの人の言葉がなにひとつとして聞き取れません
が 去り際に彼らが「お可哀想に」とだけ呟いたそのせいで
あの人の千の嘆きをも
あの人の万の侮蔑をも
瞬く間に打ち砕いてしまいました 意図せずして粉々に
そんな生き物なのです 詩人というもの
あの人は泣きません
「やつらの食い物になりたくないからね」
わたしからもできることなら あなた方には黙っていてほしいかぎり
なんたって酷すぎるもの そんなにしつこく いじめなくてもいいでしょう あの人はもう
疲れきって不貞寝しちゃった
まったくいい迷惑ですよ はあ
こんなになるまでこの人も 意地を張らなくたっていいのに
――寝息をたてる真理の頬を わたしはそうっと撫でました
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