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オーティスト・エヌ

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エヌの父の覚え書き

6月に入って、エヌは立て続けに脱走をした。

今までにない本格的脱走だ。

一度目はシャツ一、ちんちん丸出しで出かけていたので、あえなく途中で通報され、警察のお世話になった。

二度目はちゃんと服を着ていたので、目的地にたどり着いたようだった。
4kmも離れた大型スーパー。
日頃お気に入りのゲームをさせによく連れて行くところだ。

三度目は、脱走に気付いてすぐに後を追った。
近所の葬儀屋の警備員さんが保護してくれていた。
聞けば、幹線道路の真ん中でうろうろしていたのだという。

ショックだった。

どこかで「遠出はしてもちゃんと歩道を歩いているだろう」と思い込んでいた。


4kmも離れたところにたどり着ける記憶力、意志力、体力があって、歩道を歩く判断力がない。
いや、高速で通り過ぎる車に恐怖を感じる本能がない。

いびつな発達。

生物として、生き延びる能力が欠けている、という思いに打ちのめされた。

公園で走り回ったり、高い塀の上を上手にバランスをとって歩いたりする姿を見て育てていた「弱そうに見えてこの子は死なない」 という確信が揺るがされた。

2009年07月13日 16:09  by 石瀬醒

コメント一覧 2件中、1~2件表示

  • このコミュに興味を持つ人が現れたので、久しぶりに何か書こうと思って去年の記事を読むと、エヌの発達の遅さに愕然とする。

    去年と比べてエヌの獲得したこととは何だろう?

    脱走はしなくなった。

    回転寿司チェーンに行きたがらなくなった。

    銭湯にむやみに入りたがらなくなった。

    どれも、単にブームが過ぎた、という類のものだ。


    ものをこぼさずに食べるのが上手くなった。

    スーパーでカートを押したがる。また、上手に押す。

    服のボタンを外し、留める事を自分でするようになった。

    まあ、技術は向上している。コミュニケーション技術以外は。


    こだわりがやや強くなり、手摺などを触りながら歩いていて、触り残しを気にして後戻りすることなどが見られるようになった。

    私に対してスキンシップを強く求め、腕の皮膚などを触ったり、口を着けてきたりするようになった。

    発達の一過程か。それとも、スキンシップが増す事などは、性的に成熟しつつあるせいなのか。

    なんにせよ、見違えるように変わっては居ない。

    相変わらず、オムツを自分で引っ張り出してきてうんこをし、『拭いて』と手を引くし、
    相変わらず休日には自転車を漕ぐ私を『操縦』してドライブを楽しむ。

    ヘレン・ケラーの『W・A・T・E・R』は、まだ彼には訪れない。

    2010年10月23日 05:32 by 石瀬醒

  • エヌは自立心旺盛だ。

    何事も人に頼む前に自分で何とかしようとする。

    意欲的で良いことだとも思うが、コミュニケーション能力が低いせいなのは間違いない。

    彼を乗せて自転車で行くと、彼は曲がり角で僕を“操縦”しようとする。

    後ろから腕を掴んで右に左に引っ張る。

    彼の「人に頼む」は、「自分でやる」の一形態に過ぎない。

    妻が幼い頃から、本人が嫌がっている時でもスキンシップを欠かさなかったお陰で、エヌは抱っこや頬ずりなどの触れ合いを好む。

    甘えたである。

    しかし、そうした安らぎ、触れ合う心地良さと、自分の望みを叶えてくれることとは、交換可能ではない。

    抱きしめる代わりにディズニーランドに連れて行くことで愛情を示したり、キスの代わりに指輪を贈ったりすることは、エヌには通 じないだろう。

    まあ、健常者に於いても、そこの部分のリンクはそう強力なものではないような気もするが。

    とにかく、エヌにとっては、「人にしてもらう」は「道具を使う」とほぼイコールなのである。

    2009年07月14日 11:56 by 石瀬醒