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悪ノ娘 〈1〉

私、鏡音リン。

この国の頂点に君臨する14の王女。

「レン、今日のおやつは何?」

双子の弟で、召使いのレンに尋ねる。

「今日のおやつはブリオッシュだよ」

穏やかに微笑みながら、彼は答える。

ブリオッシュは私の好物だ。

「やった、ブリオッシュ大好き♪」

野原に寝転んで、レンと穏やかに過ごす時間が私は好きだった。

自分の立場を忘れられる唯一の時間。



「レン、出かけましょう」

久々のお出かけだ。

「……了解しました」

静かに答え、レンは俯く。

宝石や洋服が欲しいな、などと考える。

欲しいものは何でも手に入る。

お金が足りなくなったなら、愚民どもから搾り取れば良い。

「ねぇ、レンは何が欲しいの?」

大人に囲まれて生きてきた私にとって、レンは唯一の信頼できる相手だった。

「僕は何もいらないよ」

彼は、私に微笑みかけた。

「そう?レンは欲が無いのね」

チラリと民衆に目を向けると、皆ペコペコとお辞儀を始めた。

「はぁ……私は、もっと普通に生活がしたいな……」

正直な気持ちだった。

今の何の不便のない生活も、嫌ではないが「女王」という立場は何かと面倒くさい。

「女王」だから、優雅な振る舞いをしなければ。

「そんな事言っちゃダメだよ。リンは幸せなんだから」

レンがすかさずたしなめる。

確かに食事もままならないような、庶民よりはマシだろう。

けれど、もっと自由が欲しい。

「あれが女王かい?まだ14歳の小娘だろう?そんなんでこの国は大丈夫なのかね?」

「見てご覧、あの服を。高級な布で作られているんだろうね……」

王家の誇りとして、服も高級ではならないと教育されて従ってきた。

それなのになぜ、その事で責められるのだろう?

民衆達の目には怯えしか映っていなかった。

皆、楽しそうな表情など浮かべていなかった。

「私……王女でよかったかも」



2011年04月04日 11:29  by 桜川キョオコ

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