「味噌汁」で作文
別コミュからのお引越しネタです。
「味噌汁」を扱った文章を募集します。
長ければ連載もOKです。
連載は、一括入力必須、必ず連番を振る、と言うルールで。
文に対するコメントなんかも入れてもらえたら楽しいですね。
↑は、このコミュ見て思いました。
2007年10月10日 09:21 by 石瀬醒
2
僕が味噌汁の夢のことを尋ねると、一月ぶりに会った高野はからっと笑った。
「ああ、もう、見ないよ」
「そっか、良かったな。結局、なんだったんだろうね」
高野は悠々とタバコに火をつける。美味そうに一服。
煙を吐きながら、目を細めて窓の外を見た。
「……実は、お前とここで話したあともあの味噌汁の夢、見続けたんだ。全部で十日間ぐらいかな。ほんと、毎日死にそうだった 」
その頃のことを思い出したのか、高野はくく、と笑った。
「で、最後の日に、いきなりおふくろが出てきたんだ」
僕は、反射的に高野の顔を見る。
高野は僕の顔を覗き込み、にやりとする。
「『ほら、もっと』おふくろは俺に味噌汁を勧める。腹いっぱいで死にそうな俺は、おふくろにもう味噌汁はたくさんだって言っ てやった」
「……おふくろさんは、なんて?」
「不思議そうな顔して、『なに、あんた、子供の頃は母ちゃんの味噌汁は日本一だ、って言ってたじゃないかい』って言うんだ。 だから、たくさん作ってやったのに、って」
高野はガラスの向こうの空を見上げた。
「目が覚めてぼんやりしてたら、親父から電話が来たよ。ものすごい、取り乱した様子でさ。……おれは、ああそうか、って思っ た」
高野の母親は三週間ほど前に亡くなった。
それは、僕の耳にも届いていた。
「母親って、すげえよな。俺、味噌汁のことなんか、これっぽっちも憶えてなかったってのに。……ほんと、すげえよ」
僕はなんと言って良いか分からなかった。
「おまえもさ、おふくろさん、大事にしてやれよ」
そう言って、高野は軽やかな足取りで自分の仕事場に戻っていった。
僕は少しの間ぼんやりしてから、しばらくぶりに、実家に電話をかけた。
2007年10月10日 10:00 by もみじ
1
高野はげっそりした様子で、どかっと腰を下ろした。
胸ポケットからタバコを取り出し、火をつける。
「どうしたんだ?」
僕は高野の隣に腰掛けながら尋ねた。
高野は僕のほうをちらっと見てから、視線を窓の外に向ける。
「……最近、嫌な夢を見るんだ」
高野はタバコを持っていない左手で、髪をかき上げる。
「味噌汁の夢」
僕は危うく、口の中のコーヒーを噴きそうになった。
「味噌汁って」
「味噌汁だよ、味噌汁。ミソスープ! ……なんか、わんこそばみたいに、際限なく出てくるんだよ、味噌汁が。夢の中の俺は、 ひたすら、それを平らげ続ける。もう、三日連続だ」
高野は「勘弁してくれ」と小さくつぶやき、大きく息を吐いた。
「それは……大変だね」
僕は他になんて言って良いか分からなかった。
ただ、そんな夢を三日連続で見たら、高野と言えども、さすがに辛いだろうと思った。
高野と僕は、無言で窓の外を眺める。
やがて、高野はタバコの火を消し、「じゃ」と仕事場に戻っていった。
その背中には、哀愁のようなものが漂っていた。
僕は高野と味噌汁のことを考え、悪いとは思いつつ、少し笑ってしまった。
2007年10月10日 09:58 by もみじ
2
「その娘の実家がその夜味噌汁を出すとどうして分かる?死体運び込んでから無いと分かったらどうしようもないぜ」
「そん時は、その家で作った梅酒とか、なんか探すさ」
「梅酒じゃ俺の課題と関係ねえよ。味噌汁じゃなきゃ」
「じゃあ、あれだ。彼女が目の前で実家に電話して『遅くなっても帰るから、味噌汁残しといてよ、お母さんの味噌汁美味しいん だから』とか言っ てるのを聞いて、思いつくんだ」
「お前、そんな良い娘を、よく殺すなあ・・・」
「いいんだよ。もう、この際仕方ないんだよ」
「寝てるとは言え、人の居る家に死体を運び込んで作業するのは、難しくないか」
「う・・・最悪、台所まで辿り着けさえすれば、今味噌汁を飲んで倒れた、という演技をして・・・」
「救急隊員が来て、体温の低さを確認されたら終わりじゃないか?硬直が出てたら家に運び込むこと自体難しいだろうし。硬直が 解けるまで待って たら、死斑なんかに矛盾出そうだし」
「時代設定で逃げれないかな。江戸時代で、捕物帖物にする」
「江戸時代の検屍で、胃の内容物調べないだろ」
「じゃあ、こんな感じで。舞台は1930年代のアメリカ。胃の内容物から、最後にした食事を割り出して事件逮捕に結びつけた 教授が、新聞など で報道されて有名になる。それが自分の住んでいる地区なのを知った犯人が、このトリックを思いつく。当時は死 斑の研究はまだ進んでいなかった、と 言うことで」
「アメリカ?味噌汁だよ?」
「日系人社会での犯罪だね。太平洋戦争開戦直前の世相なんかも書き込んで、日系人に対する迫害とか、日系人が収容所に入れら れるとかの歴史的 エピソードも絡めて、作品に厚みを出すんだ。主人公が現代の日本人で、曽祖父の残した文書の謎を探るうちに真 相に辿り着くとか、そういう構成にし て」
「出すんだじゃねえよ、使えねえアイデアを無理やり使うために、能力再開発講座の課題に俺何ページ費やさなきゃいけねえんだ よ」
「じゃあ俺が書くよ」
彼の代表作、「ロサンゼルス1939:味噌汁の謎」誕生の瞬間であった。
2007年10月10日 09:22 by 石瀬醒
1
「今週の能力再開発講座でさあ、『味噌汁の、飲む以外の使い道5つ考えろ』って課題を出されちゃってさ」
「何、お前まだそんなの行ってたのかよ」
「ああ、行ってるさ。俺は自分に潜在してる力を100%発揮したいからね」
「潜在してないよ。お前は今でも100%力を出し切ってお前らしく生きてるよ。自信持てよ」
「持てないよそんな言い方じゃ。むしろ少し落ち込んだよ。じゃあお前味噌汁の使い方考えてみろよ」
「何が『じゃあ』なんだ。お前のそういう子供じみたテキトーな所をまず治す方がいいんじゃないか」
「いいんだよ、俺はダメな所を治すより、良い所を伸ばす方が大成する子なんだよ」
「ダメな所も治そうよ」
「とにかく、味噌汁、何か言ってみろよ。日頃天才だの発想王だのうそぶいてんだから」
「言ってねえよ、発想王とか。そのネーミングが既に発想ダメだろ」
「何だ、出来ないんだ。もうお前も普通の人になっちまったんだな」
「んだよ、普通の人って。いいよ、やってやるよ。味噌汁の使い方だろ?
色々あるじゃん。流しに捨てて河川を塩分で汚染するとか、手枷や鉄格子に注いで腐食を早めるとか」
「『破獄』かよ、そういう薀蓄とかマメ知識とかいいんだよ。発想してくれよ」
「えーと、屍体の胃に注入してアリバイ工作」
「なんだそりゃ」
「実家住みの女を殺してだな、家族が寝静まった後で家に運び込んで、台所に残ってる味噌汁を胃の中に注入する。検死で胃の内 容物調べたときに 、家に帰ってから殺されたってことになるだろ」
「お前が死体を家まで運ぶんなら、それでもアリバイ成立するわけ無いじゃん」
「んー、じゃあ、殺害現場の誤認だな、サブトリックとして使う」
「注入するときに食道に出来る傷や、全く消化されてないことが怪しまれないかな」
「シリコンゴム製のパイプとか、なんかあるだろ。消化は・・・味噌汁に青酸カリを入れておいて、飲んですぐ死んだように見せ れば説明つかない かな。もちろんもともと青酸カリで毒殺しておくんだけど。鍋の中の味噌汁にも青酸カリが入ってるから、帰宅し てそれを飲んで死んだことになる」
2007年10月10日 09:21 by 石瀬醒
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