ショートショート
小説の体を成してないものは『断片小説』トピックへ。それに対して短いけど「一応、小説ですよ」と思うものはコチラへどうぞ。
石瀬醒の作ってくださった『断片小説』トピックは「今思いついたシーンを書きたい」「物語の欠片を見てもらいたい」という時 にすごく良いと思います。
だからこそ『断片小説』と『ショートショート』は別物として発表しませんか。
ショートショートの投稿はぜひぜひこちらへどうぞ。
ギャグです。遊びで作っちゃいます。
「なぁなぁ!ケイン!」
「・・・何だ」
「お前リョウヤとどういう関係なの?」
予想外の質問に返答に戸惑う。
「どう・・って、兄弟みたいなもんだよ。」
「ふーん。なんだつまんねぇの!」
「どういう返事を期待してたんだお前は。」
「例えば俺のハニーさ!とか」
「殺すぞ」
「ツンデレですね。分かります。」
「うおっ!?ユーキ??」
「何時からいたんだ・・・というかツンデレじゃねぇよ・・!!!」
「照れるなって♪」
「何の話ー?」
「リョウヤ・・!!お前・・・空気読めないのか?」
「いや むしろGJ!!」
「この野郎・・・」
一方別室。
「あいつ等少しは真面目に仕事が出来ないのか・・・!」
「まぁまぁ王子。いつもの事じゃないですか。」
「お前は甘すぎるんだ。ユウタ。」
「いやぁ えへへ」
これがある王国の日常茶飯事だと言う事は彼等しか知らない。
2009年08月03日 21:42 by 双葉 雪
アンパンマン誕生秘話
昭和52年、当時やなせたかし氏は行き詰まっていた。
お子様に夢を与える仕事は、ほぼ藤子不二夫に独占されており、紙芝居や絵本の依頼もほとんど無かった。
焦りから酒量も増え、毎晩のように場末のスナックに通う生活だった。
そんなある日、たかしはホステスあけみと良い仲になってしまう。
しかしそれは彼女のヒモ、ケンジの罠だった。
「よくも俺の女に手を出したな!20万で話をつけよう」というケンジの言葉に、正義感の強いたかしは切れた。
「君の怒りはあけみさんへの愛ゆえではないのか!?君は愛の問題を金で解決するのか?この、資本主義の権化!拝金主義者!ハ イキンマンめ!」
見ようによっては逆切れとも思えるたかしの逆襲に、ケンジはいきり立った。
「んだと!このオヤジ!」
殴りかかるケンジの前に、痩せた男が立ちふさがった。
「どういう経緯か知らねえが、兄さん、手ぇだしちゃあいけねぇ」
「うるせえ!」
鉄拳の鉾先を変えて男に殴りかかるケンジの顎を、男の繰り出した滑らかな右ストレートが捉えた。
ケンジは一言も発することなく糸の切れた人形の如くその場に崩折れた。
ボクシングファンだったたかしは感動し、「ワンパンチだ!本物のワンパンチKOだ!ワンパンマンだ!」と叫んだという。
ちなみに、その痩せた男というのはたまたま店に来ていた元WBCバンタム級日本チャンピオン某であったという。
やなせたかしはこの出来事にいたく刺激を受け、馴染みの編集者に次回作の構想が出来たと電話をした。
「ワンパンマンとハイキンマン」と題されたその作品は、しかし、スナックが舞台であること、“拝金主義者”などというフレー ズが時代遅れかつ難解であること、主人公の必殺技が“ワンパンチKO”というのが妙にリアルであること等を理由に即座に却下され た。
編集は「少し柔らかく、『アンパンマンとバイキンマン』にすればどうでしょう?」と提案し、結局その案が採用された。
以上が、未だ語られた事のない、アンパンマン誕生の経緯である。
という空想。
2009年07月22日 22:51 by 石瀬醒
いまどこ
もしもし、と言われるのが大嫌いだ。返事を催促する、強引で傲慢なその発音とリズムが。
電話が苦手、とか、電話代節約のためできるだけメールで済ませようとする、なんていう人はたくさんいるけれど、わたしはも うその声を想像するだけで吐き気をもよおしてくる。
だからとうとう、わたしはシルバーピンク・二ツ折のそれを、埋めた。一週間分の洗濯物を干すといっぱいいっぱいになるアパ ートのベランダに、土を詰め込んだトマト缶を並べて。ヒヤシンス、ヒヤシンス、ミニトマト、パセリ、ケータイ。それは、球根のさ きっぽからかわいらしく緑の芽がのぞくように、わたしの親指の指紋で磨り減ったプッシュボタンをのぞかせている。
そして今まさに水をやっている最中に――それは3分の1ほど土に埋もれた体を震わせた。「着信」。
わたしはそこにじょうろの水を注ぎかける。ところがそいつはいつまでも元気に体を震わせ続けた。直径9センチの大地に局所 型地震。3拍子のリズムで余震が続いている。そして洪水。水滴と泥がわずかに跳ね飛ばされた。
わたしは通話ボタンを押した。
「もしもし」
もしもし、とわたしは復唱する。
「いまどこ?」
いまどこ、と心のなかで繰り返して、ようやくそれが質問であると理解する。
土の中、とわたしは答える。濡れていて、冷たくて暗いの。埋まっているから、動けないの。
「助けて」
わたしは言う。けれど、液晶は真っ暗になっていた。水と土の粒によるドット柄で、現代風の墓標のよう。
やがてヒヤシンスの一つが、重たそうな紫の花の房をつけた。けれどもう一つは、葉っぱのまま枯れてしまった。ミニトマトと パセリは、ささやかなサラダになった。
そして誰も助けに来ないから、わたしはまだ埋まっている。
2009年04月13日 01:43 by marika*
「だって、神様ですもの。それくらいのサービス、してくれるんじゃないですか?」
彼女はそう言って、祈るように目を閉じ、薄く笑った。
↓
ぼくは最後の句点を打ち終え、内容を保存してエディタを閉じた。
物語の中の彼女が最後に祈るのは神であり、上位の存在であり、つまりはぼくである。だけど、勿論ぼくが神でなどある筈もな く、ぼくが彼女の為にできるのは「ただ、こうしたい」と思ったままにキーを叩くことだけであり、そんなぼくは信仰の対象にはなり 得ない。だから、彼女の居る世界に神は居ないのだと言える。居るのはディスプレイの前に座っている、ちっぽけなぼくだけだ。
パソコンの電源を落とし、背もたれに身体を預けたぼくは考える。もし、自分の存在するこの世界よりも下位に位置している世 界が実存しているのだと仮定したとき、その前提がある限り、同時にぼくは自分の住む世界の上位に位置する世界を否定することがで きず、そう考えるぼくは、下位に存在する世界が本物であればいい、ぼくによって書かれた人たちが幸せであってくれればいい、と思 っていて、そう思うぼくは、「自分たち」が存在する世界が階層的な構成である、と言う事実をある程度受け入れなければならない。
「言ってみれば、あり得ないこと、なんて言うのは一つだってないんだけれどね」
消極的事実を否認するのは難しい。ましてや、自分が「そうであればいい」と思っているのなら、尚更だった。
ぼくは椅子を軋ませながら、少し灰色がかった天井を見つめ、
↓
――ねぇ? と見えてもいない誰かに問いかけるように、或いは押し付けるように、言った。
↓
"all's right with the world,,,"is the end.
2009年03月04日 20:27 by しあ
『競作』
『「佐野先輩とショートショートの競作をするんだって?」
箕輪英太郎が聞いてきた。
「そうだけど・・・それが何か?」
「やめときなよ」
箕輪は心配そうな顔で続ける。
「明石さん、潰されちゃうよ」
深刻そのものの彼の口調に、わたしは噴き出しそうになった。
「潰されるって、何よ。文学の競作よ、格闘技じゃないんだから」
「そうなんだけど、何ていうか、佐野先輩は特別なんだよ」
適当に手をひらひらさせて、わたしはその話を終わらせた。
佐野先輩と競作をすると決まってから、この手の忠告?警告?を何度も受けた。
なんでも、佐野先輩は今までに幾人もの競作相手を『再起不能』にしているという。
話し手は常に真剣に、恐怖におののきつつ、といった様子でわたしにそう語るのだが、わたしは毎回辛うじて噴き出すのをこらえ てそれを聞いた。
元々わたしはどちらが上手いか勝負をつけよう、などという気持ちで競作するわけではない。だから、佐野先輩がどんなものを書 いてこようとそれで打ちのめされるという事など無い。
それに…、先輩の作品は幾つか読んでいたが、読み易く引き込まれる文章ではあるものの、正直、“文学”では無いと思っていた 。
ヒネリの利いた、ブラックな味の娯楽作品。
面白い読み物ではあっても、それだけ。
私のように、形にならない生の感覚を表現しようとする“文学”作品とは、始めから違うものなのだ。
周囲の目に、先輩の“勝ち”と映ろうが、私にはちっとも構わない。
何故なら、私の気持ちを一番分かっているのが私である以上、私にとって最高の作品は常に私の作品なのだから…』
佐野誠吾の作品『競作』をここまで読んだ時、明石理恵子は文学部部誌を床に取り落としてしまった。
軽い眩暈を感じてよろめいた明石の肩を、誰かが支えた。
「大丈夫かい?」
明石の顔を心配そうに覗き込んだのは、佐野だった。
「心配だよ。僕には、君の気持ちが痛いほど分かるから」
2009年02月22日 23:29 by 石瀬醒
春の宴
理系男子と文系男子。喩えていうなら理系は法則の眼鏡を見つけ、世界を見る。文系は法則など通用しない人の心の深淵を覗く。 そう、1+1は2にはならない世界。
「ブンガクって重箱の隅をつつくようなモノなんだ。突付いて、突付きまくってみたらそこには何にもなかったっていう...。 」
コンパで隣に座った同じ学部の先輩は言った。髪は自然に分けていて中肉中背で歳の割にはすこし老けて見えるが黒縁眼鏡の奥は ビー球のようにキラキラした目。やや自嘲気味な喩えに返す言葉もない。
「ところで君はなんでブンガク部に入ったんだい?」
ビールを注ぐ手が一瞬とまる。
「理系に行きたかったんですけど、文系の科目のほうの点数が良かったんで..。進学するつまりならって、先生にも説得された から..。」
先輩はビールの気泡を眺めながら、ふうんと言う。
「ブンガクなんてやっても、それだけじゃ食ってけないっしょ!」
「手に職つけなきゃ、生活できないわよー。」
爆笑がまきおこる。皆、ほんのり顔が上気して、目がとろんと据わっている。しかし、そんな中、一人だけ酔えない自分がいた。
『来夢 IN PALALLELworld
息抜き劇場 ☆ショートショート☆』
「何読んでんの?」
声を掛けられて、来夢は顔を上げた。旅の仲間であるトップが立っている。
「ショートショートだよ」
「なにそれ」
近くのイスに座りながら、トップが言った。
「短いお話なの。読みやすいから好きなんだ」
「へぇ、そんなのもあるんだ、ここ」
トップの言葉に、来夢は笑ってしまった。ここは、トップ所有の書庫なのだ。
「読んでみる?」
言って、来夢が持っていた本を差し出す。
「読んでたんだろ?」
「ちょうど一つ読み終わったとこなんだ。だから、はい」
来夢が差し出した本を開いて、トップが眺める。
「読書家の俺ってのもいいかもな」
トップが言って、ページを開く。なんとなくその様子を眺めていると、後ろの扉が開いた。
「来夢」
振り向くと、エプロン姿のプレスが居た。
「トップ君知らな……あ、ここにいたの」
「うん。読書中なんだよ」
「読書?」
プレスの声に、英樹も顔を出した。
「トップが?」
「そうだよ。読書家のオレなんだから」
えへんぷいと来夢が言った。
「そうは見えないけど」
プレスの声に、来夢は視線を戻した。トップは本を枕にして気持ちよさそうに眠っていた。
「まあ、お約束ってとこだよね」
英樹が言って、毛布を持ってきた。しばらくトップを見てた来夢だが、小さく呟いた。
「これじゃあ、あたしも本が読めないよ」
おしまい。
ショートショートなので、キャラの説明などは割愛させていただきました。
こんな感じの子達が旅してるお話を書いています。
ブログ:来夢 IN『http://palallelworld.blog81.fc2.com/』
2009年02月21日 00:54 by 桐月きらり
「それ、どげんしたと?」
「いや、宝蔵寺さんとこの荷物運ぶのを手伝ったら、一袋くれた」
宝蔵寺さんは、俺の勤める観光案内所の横の、道の駅で果物を売っている。
俺が抱えていたのは、冬の定番。五キロの網袋に入れられたみかんだ。
「宝蔵寺のじいさん、入院したらしか」
「そうなのか」
道理で、ばーさん一人しかいないのに、こんな重い荷物の山だった訳だ。
「寒かったろ。だご汁にしたけん」
「ああ」
皮が薄くて甘いみかんを、台所へ運び、籠へと盛る。
かごを手に、居間へと戻ると、味噌のいい匂いが漂っている。旧式の石油ストーブの上で、だんご汁が温まっていた。
刻んだ人参と、たっぷりのごぼう。あとは里芋を煮込んで、小麦粉をこねたものを伸ばして入れただけの、郷土料理だが、麦味噌 のいい香りが食欲をそそる。
「温もると良か」
そう云って、温かいどんぶりを手渡された。『ぬくもる』と云う響きが柔らかい。鮎川は最近、俺の前でも、自然に方言が出るよ うになった。
涼やかな美貌とメガネが相まって、見る人には冷たい印象を与えがちだった、鮎川の標準語は、何処かそっけなかった。が、ここ へ越してきてから、抑揚の無いやわらかな言葉尻の無いことが、鮎川の印象をそう見せていたのだと知った。
ここへ来て、素顔の鮎川を知るたびに、もっと好きになる。
こたつの中で、鮎川の足に、俺の足が触れた。
「ごめん」
九州とは云え、山間部の寒さは、東京などよりずっと冷える。外から帰ったばかりの俺の足は、おそらく、氷のように冷たかった に違いない。
だが、すぐに離そうとした俺の足を追いかけるように、鮎川の足が伸ばされてくる。
「あ、鮎?」
「寒かったろが」
鮎川の視線は、自分の握ったみかんに落とされたままだ。
こたつの中で、温まった足が、俺の足を包み込むように触れてくる。
「うん、寒かった」
「早よ、食わんな」
「うん。食べる」
言葉を交わす間、鮎川はずっと下を向いて、みかんの皮を剥いていた。
芯から冷えていた身体が温まっていくのは、きっと、こたつの所為でも、ストーブで温められた部屋の所為でも無い。
心尽くしの『だご汁』と、きっと真っ赤になっているだろう目の前の恋人の所為。
2009年01月26日 20:23 by 真名あきら
「世界がづるりと反転した」
「それを見た瞬間僕は昔わくわくしながら皿にあけたプリンを思い出してた」
「空が足元をしっかりと支える」
「地面はぐんぐん空に昇っていく」
「カラスが目を白黒させて地面になってしまった空にぶつかった」
「幾らなんでもあんまりだ」
「空気がどんどん薄くなっていく」
「噫」
2009年01月23日 16:52 by わかめのミルクセーキ
「それでも、僕がそのオレンジジュースに毒を入れたことを証明しない限り、僕が犯人だと言うことを証明したことにはならない! 」
佐藤は猶も不敵な笑みを浮かべてそう言い放った。
と、中丸刑事が、顔を上げ、佐藤の目を覗き込んだ。
何かを問いかけるような中丸の視線にうろたえ、佐藤は目を泳がせた。
「な、何だよ…」
横から、加藤刑事が言う。
「佐藤、お前、何故みゆきさんが飲んだのがオレンジジュースだって知ってたんだ?」
「おかしいですねぇ、私は『毒の入ったジュース』とは言いましたが、オレンジジュースとは一言も言ってないはずですが」
中丸が駄目を押す。
佐藤が、言葉に詰まり、顔を伏せた。
「え、なに、僕、オレンジジュースとか、言った?」
顔を上げた佐藤が、再び人を喰った笑顔でそう言った。
「え、なに?今の『何故知ってたんですか』が決めてとか?それで僕が『あいつが憎かったんだ〜!』って自白すると思ってたと か?」
「佐藤、お前、今確かにオレンジジュースって言ったじゃねえか!犯人じゃないなら、なんでお前がそんな事知ってるんだよ!」
加藤が詰め寄る。
「言った言わないは水掛け論ですね。調書とるなら、改めて供述しますよ」
「貴様あ!確かにさっき言ったじゃねえか!
ねえ、中丸さんも確かに聞きましたよね!」
加藤が中丸に噛み付かんばかりに顔を寄せる。
中丸は、ふ、と肩の力を抜き、加藤を見上げて言った。
「ダメみたいですね。仕方ない、ちゃんと捜査しましょう」
2009年01月03日 15:17 by 石瀬醒
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