第一弾のリレー小説ですよ
援護者・・・恋人達の逆位置 気が変わりやすい。目移り。非協力的な態度。いい加減。波乱。気まぐれ。
敵対者・・・つるされた男の正位置 試練のとき。身動きできない。中途半端な立場。困難。
過去・・・死の正位置 失敗。突然の変化。過去を捨てる。苦境。破壊。行き止まり。手遅れとなる。
というしがらみのもと
お話をくりひろげます
『石瀬醒様』→『 四方飛妖様』→『銀様』→『私、ウィスペル』→『葉様』→『 いき♂様』
の順番ですっっ
皆さん頑張りましょうっっ
2008年02月28日 22:25 by ウィスペル
28
「最後に、中国ですか・・・」
中国はアメリカを牽制する一方で、日本にも圧力をかけているということだ。
こちらはアメリカよりも過激で、単なる経済制裁に止まらず、武力による交渉も辞さないという姿勢を示した。
アメリカが経済界から没落しつつある今、中国はアメリカの持つその経済界の地位と、さらに世界警察(ワールドポリス)として の地位を我がものにしようと目論んでいる。
そのためにSTYXが鍵となると践んでいるのだ。
一方で、その地位を手にするにはやはり国際社会の顔色も窺わねばならず、EUの監視の目もあって、実質的な武力行使は当面で きそうにないでいる。
「他の諸外国に関しては、価値のある情報はありませんね。ロシアに関しては先に言った通り、様子見です。まぁ、どうせ他のと ころが得たものを横取りするつもりでしょう。以上が、百鬼夜行のまとめた情報です」
彼らの来た時間が遅かったことや、先の戦闘で話しが中断されたこともあり、辺りは既に真っ暗だった。
生憎と雲が出ており、月も星もない寂れた街はより一層不吉な静けさに包まれていた。
2008年04月16日 02:33 by 銀姫翠
27
「次にイギリス・ドイツを中心としたEU連合ですが、彼らは別の観点から、割合多くの情報を持っているようです・・・」
英・独はアメリカから圧力をかけられている日本を支援し、アメリカを牽制する姿勢をとっていた。
その見返りとして、日本からSTYXに関するデータを少しずつ受け取っているということだった。
ただし、EU連合は日本がSTYXに関しての第一開発者であるということを半ば公式に表明、研究の第一人者としての地位を完 全に放棄していた。
このために、日本は少しずつ情報を開示しているらしい。
要するに。EU連合は、真木とSTYXの行方には関与せず、そのデータを元に、実験そのものを再現する方針をとっているとい うことだ。
「日本政府はそのデータをどうやって開示しているんだ?」
「真木さん、やはり良い思考をお持ちですね」
ヤタは感心して微笑した。
「日本政府が胡散臭い理由がここにもあります・・・」
日本政府の開示する情報の大半は、国の定めた研究指針に沿って、真木が定期的に大学と文科省に提出していた報告書らしいとい うことだった。
しかし、それだけで実験を再現するのは無理があることから、それ以外の情報が流れている可能性も否定できないらしい。
また、日本は情報を渡す代わりに、EU連合が進める再現実験のデータを返してもらっているとのことだった。
本来、論文の流出などあってはならないのだが、どうやら日本は自国の保身のために、その切り札を有効に活用し始めたらしい。
2008年04月16日 02:28 by 銀姫翠
26
「そうなのか?」
「まぁ、先生、慌てなさんな。その話しは後で良い」
化け猫はヤタの言葉を否定しなかった。
「良くない。何故黙っていた」
真木は新たな事実を隠していた化け猫に強烈な不信感を抱き、思わず語勢を強くして問う。だが、
「今はまだ早い。ヤタ、話しを続けろ」
化け猫は強圧的な目で真木を睨み付けると、ヤタに話しを促した。
真木としては、問題は何一つ解決しなかったが、化け猫の殺気に気圧されて、それ以上訊くことが出来なかった。
「良いでしょう。こちらとしてはそちらの組織にも興味がありますがね」
ヤタも聞き出そうとしたが、化け猫が口を開く気配が無いのを見て、再び話し始めた。
「北朝鮮同様、アメリカも躍起になっています・・・」
アメリカは真木達の研究を密かに観察していたということだった。そして、学会で発表したら情報を操作して奪取する目論みだっ たらしい。
北朝鮮をなめていたアメリカはその計画を知りつつ、放置しており、あくまでオリジナルの計画を進める予定にしていたのだ。
その北朝鮮はやはり失敗したが、一方で、奪取するべきものも消えてしまった。
そこで日本政府にいつもの様に圧力をかけたが、またも日本をなめきっていたアメリカの予定は裏切られ、日本に突っぱねられた 。
現在は日本政府に圧力をかけつつ、北朝鮮の工作員を片っ端から捕らえて尋問しているらしいということだった。
「さて、次は日本ですが、この国の挙動はどうも胡散臭い」
ヤタは日本について不満げに話し始めた。
まず、真木の研究室が出荷する少し前に、警察に通報があったらしい。
そして、何故か通常の警察ではなく、機動隊が突入したが、何事もなく引き上げたということになっている。
そして、それから少し後に、研究室から出火したのだった。
しかし、不審なことに通話記録には通報の履歴は見当たらない。
一方で、機動隊の突入前後、現場には真木研のメンバーがいたことが確認されており、その際に資料が奪われたとは考えにくいと いうことだった。
2008年04月16日 02:27 by 銀姫翠
25
「さて、ではまず、先程概略だけ言いましたが、各国の動きについて詳しく話しましょう・・・」
ヤタによれば、北朝鮮は活動こそ活発ではあるものの、情報はほとんど得ていないということだった。
北朝鮮の当初の予定では、旅客機を爆破して真木を確保する一方で、研究室の資料を奪取するはずだった。
ところが、潮に流された真木の位置は、予測地点から大きくずれ、あろうことか自衛隊に救助されてしまった。さらに、資料の方 も、回収予定時には既に火災が発生していて確保できなかったということだった。
北朝鮮は、彼らの謳う『世界革命』と国家の存亡がかかっているため、失敗など許されないこの作戦に完全に失敗し、現在躍起に なって真木と資料を探しているらしい。
現在、世界中に散らばった諜報員が様々な工作活動を展開していて、中には武力行使による衝突を引き起こした所もあるという。
「まったく、あの国は愚かですね。今も昔も・・・。さて、次はアメリカですが・・・」
「ちょっと待ってくれ」
真木は、矢田の話に強い違和感を覚え、話しを進めるヤタを止めた。
「内通者を用意して作戦を立てて実行したのにそれが完璧に失敗に終わったのはいくらなんでも変じゃないか?」
「ええ、全くその通りです。その点に関して、日本とアメリカの動きが重要になってくるわけです」
「ああ、なるほど」
ヤタは、真木が良い点に気付いたと、愉快そうに微笑しながら話しを続けた。
要するに、研究室には北朝鮮の内通者Aがいたが、それとは別に、研究室内あるいは北朝鮮工作班の内部に、他の組織と通じてい る内通者Bがいた可能性があるということだった。
そして、北朝鮮の内通者Aはそれに気付かず、計画を実行した。
ところが、内通者Bはそれを利用して北朝鮮が奪うはずだったのを横取りし、その罪だけを北朝鮮に押しつけたということだ。
「そんなことが・・・」
「そう、全て事実です。・・・そして化け猫さん」
話しを区切ると、ヤタは化け猫に鋭い視線を向けた。
「あなたの依頼主がその組織なのではありませんか?」
2008年04月15日 02:18 by 銀姫翠
24
「まったく、気絶した人間の拘束に2分もかからないで欲しいものですね」
走狼が拘束を終えると、ヤタはやっと終わったのかと言いたげに溜め息を吐いた。
「チッ、いちいち啼くなこのクソカラス。なんだったらテメェやってみろよ」
いったいどれだけ仲が悪いのか、二人の会話には敵意しか無い。
「ふむ、もうお忘れとは頭が悪い。その様なことは私の分野ではないと言ったでしょう?」
「ちょっと、二人とも、下らない言い争いは後にしてよねっ」
一体いつまでこんな状態が続くのかと懸念した真木だったが、意外にも、フェンがそれを断ち切った。
一番幼く見え、事実そうであるにもかかわらず、フェンはこういう面では非常にしっかりしている。
女子の方が精神年齢が高いとはよく言われるのもあながち間違いではないらしい。
「ふん、テメェもさっさと仕事しやがれ」
「ええ。早速。お待たせしましたね、化け猫さん、真木さん」
2008年04月15日 02:17 by 銀姫翠
23
ガチャリ。
フェンがドアを開けると、振り向きもしない走狼と流し目で睨むヤタ、刺す様な鋭さで一瞬だけ見る化け猫、そして今度は何だと 不審を隠せない真木に、4者4様に迎えられた。
「このオニイサン重いんだねっ」
そう言いながら、ようやく、フェンはその重荷から手を離した。
「ったく、待ちくたびれたぜ」
走狼が喧嘩を売り、
「もう少しキレイにできないものですかね」
ヤタに至っては【狼】のやり方を汚らしいと一蹴した。
「むっ、そういうこと言うんなら手伝って欲しかったねっ」
フェンはぷーっと頬を膨らませて怒ってみせる。
「それは私の領域ではないんでね」
だが、ヤタは冷徹に言い放つと、フェンから目を逸らした。
「自分の仕事の後始末は自分でやるもんだろ」
走狼はそう言いながらも、フェンの方に歩いて行き、フェンの差し出したロープを受け取ると、男を拘束し始める。
そもそも、まだまだ子供のフェンが引きずってきたのは、体重がフェンの2倍以上はある成人の男だ。普通に考えても、フェンに は少々無理がある。
確かにフェンは百鬼夜行の中でも走狼と共にトップクラスの殺し屋ではあるが、戦闘に長けてはいても怪力を持っているわけでは ない。
まあ、そんなわけで、男の拘束は走狼が交代したのである。フェンではやや力が足りないからだ。
それをヤタは相変わらず流し目で見つつ、早く終われと、時計を指でトントンと叩いていた。
一方の化け猫はと言えば、相変わらず黙ったまま、彼らを横目で警戒しつつ話しの続きを待っていた。
2008年04月14日 01:46 by 銀姫翠
22
「まだそいつの仕事は終わっていない。邪魔をするな」
化け猫は牽制しつつ、視線で椅子に座れと合図を送った。
「ッ・・・」
走狼は悔しそうに唸ると、仕方なく椅子に座り直す。
「躾が足りなくてすみませんね」
走狼を一瞥すると、ヤタは満足そうにニヤリと笑い、自らも椅子に座り直した。
「・・・・・・」
化け猫は照準を走狼から外したが、しかし、撃鉄は起こしたままでホルスターに戻した。
「・・・・・・」
誰一人何も喋らなくなり、嫌な沈黙が部屋に充満する。
走狼が加わったことで、ただでさえ息苦しかった部屋の空気が、余計にチリチリと嫌な鋭さを増した。
真木には息苦しくて仕方がないのだが、ヤタはいっこうに話しを進めようとしない。
何故か化け猫も黙ったままで、話しを聞き出そうとしなかった。
「あの・・・、話しの続きは・・・?」
早く真相が知りたい真木は思わず問いかけるが、ヤタは苦笑いをしてかぶりを振った。
「すみませんね真木さん、まだあと一人、いや、二人ですか。来るのでもう少し待って下さい」
そう言って、ヤタは再び口を閉ざしてしまった。
2008年04月14日 01:44 by 銀姫翠
21
「やれやれ、外が騒がしいですね」
ヤタはそう言うと話を止めてしまった。
そして、化け猫に向けていた視線をドアに移すと、鬱陶しそうに睨み付ける。
と、ノブが回され、そのままゆっくりとドアが開いた。
足音も立てず、流れる様に部屋に入ってきたのは、黒のシャツにジーンズを履き、腰に日本刀を提げた青年だった。
青年は一瞬だけ真木の方を見、そしてすぐに化け猫に視線をずらすと、彼をを鋭く見据えた。
「もう少しお静かに願いたいものですね」
それを横目で流し見ながら、ヤタは青年に向かってそう言うと、溜め息を吐いて目を細めた。
「チッ、うるせぇ」
青年もまた鬱陶しそうにヤタを睨み付けると、病室の端にある椅子に座った。
「まったく、自己紹介くらい自分でして欲しいものですが・・・。彼が走狼です」
ヤタは再び化け猫に向き直ると、何とも面倒そうにそう言った。
「テメェ、勝手に喋るんじゃねェよ。そいつならわざわざ喋らなくても俺のことくらい知ってやがる」
走狼と呼ばれた青年は舌打ちしてヤタを睨むと、化け猫にそうだろ?と言いたげな視線を投げかける。
「ふむ。確かに化け猫さんなら知っているでしょうが、真木さんは知らないでしょうし」
ヤタも化け猫の方を見るが、化け猫は何も言わないどころか、表情も変えなかった。
「まぁ、万が一ということもありますし。自分を殺す相手に名前も覚えられていないなんて悲しいでしょうに?」
「んだとテメェ!」
ガタッと音を立てて立ち上がると、走狼はその手に日本刀の柄を掴んで、身を低く屈めた。
「待て」
ふと、それまでただ傍観していた化け猫が走狼に向けて銃を構えた。
2008年04月13日 01:01 by 銀姫翠
20
まず無線機のスイッチを入れ、「送狼、こっち終わったんだねっ、」と一言だけ言うとすぐにプチッと切り、携帯電話のメモリ ーを探索し出す。
「えぇっと、【蛇】のサーちゃんでいっか・・・もしもーし、あ、サーちゃん?うんうん元気元気ー、あのさー突然で悪いんだけ どねっ、一人徹底的に拷問して欲しいんだけど、あ、大丈夫?うん、じゃあ後で取りに来て、りょーかい」
明日の宿題見せて、とでも言いそうなノリで拷問の依頼をすると、フェンは電話を切った。そして倒れた男の襟首を掴み、院内 へズルズルと引き摺っていく。
「色々面白くなりそーなんだねっ、」
「えぇ、『STYX』に関してはすでにヤタと送狼とフェンに任せてあるから。うん、大丈夫よ、もうすぐ『STYX』は手に入 る・・・、うん?決して悪用なんかしないわよ?だからね、あー、そういうこと言わないの全くツンデレなんだから…あんたは大人し く『STYX』が来るのを手ぐすね引いて待ってなさい。分かったわね?ジョロ」
ハーリティは電話を切ると、満足そうにため息をついた。
19
パァン、と銃声が鳴り響く。と同時に送狼は弾丸を避けると、パッと駆け出していた。人間としてはかなり速い、狼が走るよう な速度で送狼は駆ける。
そして、相手の首を刀で一閃した。ブシュ、と喉から血柱が噴出し、天井にまで伸びる。
「俺らが【狼】って呼ばれてんのは伊達じゃねーんだよ、おにーさん。まさしくそのままだからさ」
そして、ガァンとたった今出来た死体を、ヤタたちが中で喋っている病室へ蹴り当てた。
パァン、パァンと銃声が響いて、最後に一人残った男が立ち竦む。
「これで全部?」
最後に残った男はコクコクと、操り人形のように機械的にフェンの問いに答える。
「あー、人数が圧倒的に少ないと思うんだねっおにーさん、私たちがいるって分かってんならさー、百人ぐらい連れてこないと話 にならないって」
フェンは両手に持った愛銃、ベレッタM92Fを手の中で退屈を象徴するかのごとくクルクルと回す。
そして何の前触れも無く、一人残った男の足を打ち抜いた。
「今ねっ、アキレス腱を打ち抜いたからさー、もう歩けないんだねっ」
フェンは何の事は無い、とでも言いそうな口調で男に近づくと、男の鳩尾に思い切り蹴りを入れた。崩れ落ちた男の頭を踏みつ けつつ、ポケットから無線機と携帯電話を取り出す。
Copyright(c)1999 FC2, Inc. All Rights Reserved.
@fc2infoさんをフォロー