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学生のたまり場

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年末年始リレー小説。

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2007年12月26日 20:51  by 春夏秋冬 葉桜 (ヒトトセハザクラ)

コメント一覧 15件中、1~10件表示



  •   *  *  *


     チカゲ・クロウ。数年前、この世の全てを手にした者。
     富、名声、権力、それらを支配した若き少女は、突然失踪した。
     カンパニーが全力で捜査を依頼したが、その真相は闇に葬られ、迷宮入りとなっていた。

    「ドクター、これをご覧下さい」
    「これは・・・」
     黒衣を羽織った男性が、ガラスの球体を覗き込む。
     中央には光を放つ鉱石が浮いていた。
     その光は青く、青く、どこまでも青く ―――― それはまるで海のように。
    「よくやったな」
    「いえ、まだこれからです」
     若い女性は鉱石を真っ直ぐに見据える。
    「そうだな。・・・これからが本番だ」

     確実に、時は刻まれていた。


    Fin.

    2008年02月08日 00:12 by 桜桃



  • 「神よ、何故時を待たない・・・」
     一足遅かった。
     片膝を付き、社長室で倒れている患者の脈を取る。
    「手遅れか」
     己の不甲斐なさに歯噛みする。
     出て行けと言われても、医者として留まるべきだったのだ。
     黒き医師。心臓手術の天才と言われる若き医師。
    「そんな肩書きがあっても、頑固じじいには敵わないのさ・・・」
     呟いた言葉は己の耳の奥で虚しく響く。
     社長の傍らに寄り添うように瞼を閉じる夫人を見たとき、熱いものが込み上げてきた。
     首筋にそっと手を当てる。
     穏やかに眠っている。そう見える夫人もまた、社長と運命を共にしたようだ。
     重なっている手の下から、淡い閃光が漏れる。
     そっと彼らの手をどかすと、紺碧の鉱石が姿を現した。
     まるで我が子のように抱える様を見て、男は目を細め、立ち上がる。
    「貴方の医師は、貴方の意志を汲みますよ」
     その言の葉は音になることなく、部屋を駆ける風に掻き消された。
     カタンと音がする。
     視線だけ背後へ送ると、戸の隙間から覗く影が見えた。
     恐らく「あれ」が社長の「希望」だろう。
     静寂という名の衣に包まれた二人を一瞥し、男は窓から外へ飛び降りた。 

     
      *  *  *


     チカゲの背筋を氷塊が滑り降りた。
     嘘だ。そんなはずはない。
     男に向けられる銃口が小刻みに震える。
    「戯けたことを言うな・・・!」
    「君の求める真相を告げたまでさ。不服か?不服だと言うのなら、俺の心臓を打ち抜けばいい」
     あくまで淡々と告げる男に、チカゲは言い返すことすらできなかった。
     引き金に掛けた指が動かない。
    「・・・・・・っ!」
     自分はこんな現実のために研究をしてきたというのか。
     こんな現実のために・・・・・・

     銃声が儚く木霊した。

    2008年02月08日 00:11 by 桜桃

  •   *  *  *


     社長室という密室で、二人の男が深刻な面持ちで佇んでいる。
    「社長、それは一体どういう・・・」
    「言葉通りの意味だ。あれが持ち帰った鉱石は特殊な磁場を持っている。時にそれは魔法のエネルギーとなり、時にそれは近くに あるだけで殺戮兵器になる」
     張りつめた空気は静寂に呑まれ、重力が増したかのような感覚に陥る。
     社長の言葉通りならば、チカゲが持ち帰った鉱石は諸刃の剣ということ。
    「では鉱石をすぐに廃棄すべきでは・・・」
    「科学の進歩にはそれ相応の犠牲が伴う」
    「ですが」
    「他言無用だ。何があってもチカゲには話すな」
    「社長!」
     言い募る黒衣の男を一瞥し、社長は冷淡に告げた。
    「今すぐ出て行け。研究が完成するまで、二度とここへは訪れるな」
     落雷に打たれたような衝撃を受け、黒衣の男、社長の専属ドクターはその部屋を後にした。
    「愚かな・・・」
     背後の扉を顧みる。
     その向こうには心臓病を患ったカンパニーの社長がいる。
    「ご自身の命より、愛娘の功績を選ぶというのか・・・」
     医者として今の自分に何ができる。
     初めて担当した患者が、こんな馬鹿げたことをするとは思わなかった。
     全く、カンパニーの社長というのは得体が知れない。
     新米ドクターを専属にし、入院しろという忠告も聞かず、「命を削る石」を研究しろというのだ。
    「その地場の元がわかれば打つ手はあるが・・・」
     時間がない。
     社長の容態はいつ急変するかわからない。その上、「あの鉱石」が傍にある。
     自分はあくまで医者であって、物理学者ではないのだ。
     成すべきことは患者の安静を保つこと。そして悪化を招く種を排除すること。
    「クビにされるならその方が有り難い」
     次はもっと素直な患者を受け持ちたいものだ。
     身を翻し、長い廊下を歩いていく。
    「とりあえず麻酔が必要か」
     強制入院の準備をすべく、男はカンパニーを出て行った。

    2008年02月08日 00:09 by 桜桃

  • 「探しましたよ」
     銃口を男へと向ける。照星を据え、心臓に狙いを定める。
     その様に、男は嘲笑した。
    「Sランクの魔法使いとも在ろう者が何を。そんな物がこの俺に通じるとでも?」
    「この銃には、マジック・ストーンで生成された魔弾が装填されています。撃鉄が弾を打てば、魔法が発動するよう作られている 。威力は……その身で試しますか?」
     冷たい声で、チカゲは脅しを掛ける。男の方は、それでその銃がどれだけの脅威かを理解した。
     鋭い眼光に捉われた男は、諦めた様に失笑した後で、肩を竦めた。
    「御免蒙りたいね。全く、物騒な物を作ったものだ」
     その呟きは、どことなく親しげに聞こえた。
     チカゲは銃を下ろさない。ここは敵陣、油断すればいつ返り討ちにあうか判らない。
     心臓に狙いを付けたまま、厳しい口調で男に問うた。
    「二年前に何があったのかを、嘘偽り無く教えなさい。惚けた事を口にしようものなら、私の指がどう動こうとも保証はしません よ」
     最早脅迫にまで堕ちたその質問に、男は含み笑いして、問い返す。
    「どれ程に残酷な真実でも、受け入れる覚悟が君にはあるのか?」
    「知らずに生き終える覚悟こそ有りはしないッ!」
     冷静を装っていたチカゲも、いよいよ怒気を表し始めた。
     しかし、男はおもむろにチカゲの目を、その奥を凝視する。そこに何を見たのか、男は瞑目して微笑を浮かべた。
    「降参だ。宜しい、教えて進ぜよう、若き女王様よ」
     銃を向けられた男は、だが微塵の恐怖も表さずに、チカゲの求める真相を語り始めた。

    2008年01月14日 04:38 by 七篠 銀字

  •  肌を舐めるかの様な濃厚な闇。どこから悪魔が顔を出そうとも、何ら不思議は無い。
     その中を平然と歩いていられるのは、暗視の魔法お蔭だ。それが無ければ、こんな所は歩けない。
     地上の光が点に見え始めた頃、チカゲの前に鉄の扉が立ちはだかった。特殊な措置は施されていないが、冷えた鉄はそれだけで も人を寄せ付けようとはしていない。
     鬼が出るか蛇が出るか、チカゲは腰に潜ませてあった拳銃を手にし、重い扉を開いた。
    「これは……」
     そこには、驚くほどに設備の行き届いた、研究室の体を成した部屋があった。あらゆる薬物、器具が揃えられ、マジック・スト ーンも保管してある。
     一流の研究室にも匹敵するその部屋には、白衣を羽織った一人の男が佇んでいる。
    「かくれんぼもここまで、か」
     二十代も後半、痩躯は黒の衣に包まれ、その顔立ちは端正だが、目の下には薄い暈がある。
     この男こそが、二年前の真相を知っている可能性のある、チカゲの獲物(ターゲット)。

    2008年01月14日 04:38 by 七篠 銀字

  •  スラム街を駆け抜ける。その薄汚れた空気も、今の彼女を前にしてはあっさりと色を変える。
     その気迫たるや、正に獲物を見つけた獅子の如し。二年間耐えてきたその空腹が、今満たされようとしているのだ。
     続く一本道を駆けて行くと、途中の壁に扉の枠ほどの亀裂が入っているのが見て取れた。
     一見すれば何の変哲も無い、見逃してしまいそうなただの罅割れだ。が、チカゲはその亀裂から漏れる微かな気配を感じ取った 。研ぎ澄まされた神経は、その些細な情報さえ見落としはしなかった。
     壁に手を触れ、目を閉じる。案の定、そこには魔力の波が感じられた。
    「――継続終了(カット)、解凍(キャンセル)、状況把握(サーチ)、同時進行開始」
     右手の人差し指に填められた指輪が煌く。カットはその魔法を無力化し、キャンセルは消去する。この壁には、効力を為す鍵と 、効果を為す壁が設けられていた。
     なるほどどれだけ探しても見付からない訳だ。多重魔法、まず凡人の為せる業ではない。
     魔法の壁は亀裂を境界として溶ける様に崩れ去り、その先の暗闇をチカゲに見せ付けた。そこには、地下へと続く階段が延々と 続いている。恐らくは此処に……。
     しかし、飛び込みはしない。サーチが終了するまでは、迂闊に行動に移るべきではなかった。
     と、サーチが終了した。罠らしき物は設置されていない様だ。
    「この、先に……」
     待ち望んだ瞬間がある、真相がある、あの男が居る。
     光を呑む闇に臆する事無く、チカゲは階下へと歩を進める。昂る感情を抑えながら、ゆっくりと。

    2008年01月14日 04:38 by 七篠 銀字

  •  聞かれた男は痛みからか呻き声しか出さない。もう一度聞いたが同じだった。
     面倒くさくなったのか彼女は男の首に手をかけ、手加減をしながらも魔法で男に押さえつける。
    「これ以上傷を増やしたくなかったら、早く答えなさい。生憎わたくしは、あまり気が長い方ではありませんので」
     丁寧な言葉使いだったが、男はまた恐怖を感じた。痛みで喘ぎながらも、男は必死に声を絞り出す。
    「あ、あいつなら……、左に行った……」
    「左ですね? わかりました」
     チカゲは男の首から手を放し開放した。恐怖から逃れた男は安堵の息を吐き、その反動でかふっと気を失った。
     その時にはもうチカゲは歩き出し、男の事など目にもくれなかった。
     男の言っていた通り先程の曲がり角を左に曲がり、そのまま一本道へと足を向ける。
     気が急いているのか最初は駆け足だった足取りが、いつの間にか走り出していた。彼女の中で警鐘が鳴り響く。
     何かが、チカゲに警鐘を鳴らさせていた――。

    2008年01月12日 01:28 by 朔夜

  •  ――ずっと探し続けているのに、何で見つからないの?
     何度も何度も自分に問いかけ、それでも答えは出てこない。
     チカゲは自分の会社にある社長室で一人、額に手をあて考え込んでいた。
     彼女があの情報を得てから、前よりも一層スラム街に通うようになっても、あの男は尻尾すらも掴ませない。改めてチカゲは追 っている男に手強さを感じた。
     彼女は諦めない。もし諦めてしまったら、今までの全てが水の泡になってしまうからだ。
     そして今日も、チカゲはスラム街へと足を向ける。

     いつもと変わらないスラム街。だがチカゲは何か違う事を感じ取った。
     今日も運転手の制止を振り切りここまで来たはいいが、進むうちに妙な空気が流れていた。それは奥に行けば行くほど強くなっ ている。
     更に極めつけはいつもならチカゲを興味本位で見ている人間がいない。まるで何かから逃げるように、息を潜めているみたいだ 。
     ――何だろうか、この空気は?
     眉間にしわを寄せながらも、チカゲはどんどん奥へと進んでいく。
    やがて行き止まりに行き当たる。その事はチカゲも知っていた。だが彼女は己の感覚を信じている。だから歩むスピードも緩めな かったのだ。
     曲がり角を曲がると何の変哲も無い行き止まりがある筈。だが目に入ったのは、そこには数人の男の呻き声と、道に男達が転が っている光景だった。
    「これは……」
     小さく声を漏らし、呆然としながらも彼女は歩みを止めなかった。
     転がっている男達を見ながら周囲に感覚を研ぎ澄ませる。まだこれをやった人間がいるかもしれないからだ。
     しかしどこを見渡しても、ここにはさっきから呻き声を上げているこの男達しかいない。
     いないのを確認すると、チカゲは呻いている男に本格的に見る。だがすぐにそれは冷めた目つきになる。
     ――弱いのなら、それらしく振舞えばいいのに。
     おそらくこの男達は、この前のチカゲのように誰かに絡んだはいいが、逆に返り討ちにあったようだ。
     ――己の実力を知らない人間は愚かだ。
     呻くしか出来ない男達を冷たい目で見ながら、まだ意識がしっかりしていそうな男に近付く。そして静かに問いかけた。
    「あなた方をやった人は、どこに行きましたか?」

    2008年01月12日 01:27 by 朔夜

  • 「―――……!」
    男達に再度襲いかかる災難。全てを見通されてしまった威圧感が直接男達の体に来たのか、震えながら男性の問いにうなずく。
    男性はフッと笑い、
    「やはりな。で?女性はどちらの方向に向かった?」
    胸ぐらを掴んでいた男性をドスリと地面に落とした。男の呻き声は“音”になっていない。男達は震える手を抑えながら、南の方 角を指で示す。男性は南に昇る太陽を見つめ、
    「―――……他言、無用だ」
    男達に忠告を残し、チカゲとは真逆の方向へと足を運ぶく。

    「―――……チカゲが真実を知るにはまだ早い。
     気付いていないだろうな、あの女は。あの時アイツが後ろで覗き見していたという事は知っていたというのに。
     チカゲと俺が逢った瞬間、若い彼女は相当な心の傷を負う。だから―――……」
    ―――俺はチカゲと逢ってはならない。
    男性は、コツコツと足音を響かせ汗臭い空気から去っていく。

    2008年01月02日 20:51 by あぐり

  • 倒れたチカゲの両親の前に立っていたのは、当時二十歳前後の若い男性。筋肉質の体型でもなく、普通より少しスラリとした体型だっ た。全身黒の服を着用していたはずだ。
    今となっては容姿はもう違っているだろう、しかしこれがチカゲにとって数少ない手がかりの中の一つである。

    ―――……スラム街、彼女の魔法で声さえ出なくなってしまった汗臭い男達の姿が、とある男性の目に映った。
    「惨めな……」
    男達の無残な姿を見て、馬鹿にするように嘆く。
    スラリとした体型。若い風格。そして黒の服―――……チカゲがこの場を去った後、入れ違いのようにその男性は現れた。
    「見んじゃねえ、とっとと消えろ!さもないとぶっ殺―――……!?」
    「この魔法の傷跡……そうか、あの娘め。ここまで己を磨いたか」
    忠告する一人の男の声も聞き入れず、その男の腕の傷跡を見て男性は笑う。
    魔法は人によって異なる特訓等を積み重ねるので、魔法自体に固有のクセがついてしまう事がよくある。男性は、男の腕の傷と共 に残ったわずかな魔力を感じ取り、この魔法を使った者を一瞬にして見破った。
    ―――……この男性は、チカゲの身近であるようで身近でないような存在だ。
    風のように現れた男性は一度目を瞑り、そして再度笑いながら倒れていた一人の男の胸ぐらを掴んだ。
    男の体型からすると八十キログラムはいっている重さだろう。しかし男性は軽々と持ち上げ、足をばたつかせた男の足を自身の長 い足で容赦なく踏みにじる。そしてチカゲに飛ばされた男全員に問うのだ。

    「ここにクロウクイーンカンパニーを名乗る女性が来ただろう」

    2008年01月02日 20:50 by あぐり

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