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物書きの会

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断片小説

短編小説よりさらに短い、というか、小説の体を成してない。
でも、今思いついたシーンを書きたい、そんなことってあるじゃないですか。

そんなあなたの、日の目を見ない物語の欠片を、チラ、と発表してみませんか?

それが面白そうだったら、ブログの小説の方も読んでみようか、と思われるかも知れませんよ!

2007年09月21日 16:46  by 石瀬醒

コメント一覧 252件中、121~130件表示

  • ぼくらのために彼はみっつのカップを買いました
    それは凄くおしゃれでぼくにはちょっと似合わない

    「猫さん、お昼寝ですか」
    紫がぼくを覗き込む
    別に眠くは無かったけど否定するのもなんだか悪いのでうんだとかううんだとか曖昧な返事を返した
    かれもへえだとかああだとか呟いてつまらなそうに瞬き
    噫、また失敗したのかもしれない

    青白い手が赤いカップを弄ぶ
    それを諌めながら彼は青いカップを磨く
    ぼくの前には黄色いカップ。ひどく異質なものに見えた

    2009年04月20日 00:17 by わかめのミルクセーキ

  • 階段を登り始めた時、足元を白いものが駆け上がっていった。
    猫だ。僕の部屋の前でうろうろしている。

    扉を開けようかと思ったが僕は躊躇した。
    いったん部屋に入り込むと、猫はなかなか出ていってくれない。
    僕はそれがあまり好きではなかった。
    自分の部屋は自分だけの空間で、僕にとって落ち着ける場所だった。
    どうしてもそれが侵されている気分になる。

    放っておけば戻るだろうと思ったが猫は降りていくつもりはないらしい。
    やれやれと思いながら僕は階段に腰をおろした。

    猫は壁や床にじゃれながら僕の足元を行ったり来たりしている。
    そうして、僕に身体を擦り付けながらごろごろと喉を鳴らしている。
    首の後ろを撫でてやるとごろりと横たわって大人しくなった。
    白い毛を指でなぞりながらじっと猫を見つめる。
    じっとどこかを見つめたままされるがままにしている。

    僕は階下に目をやった。
    階段の入り口は少し曲がった先なので廊下は見えない。
    廊下の白い明かりが差し込んでいて階段を照らしている。
    下の部屋からはテレビの声と電子音が小さく聞こえてくる。
    時折楽しそうに笑う家族の声が混じっている。

    僕に撫でられている猫が喉を鳴らす以外の音がとても遠いものに聞こえた。
    まるで世界に取り残されたようだったけれど、その時の僕には理解できなかった。
    猫を撫でる指先には温かいぬくもりが伝わってくる。

    不意に泣きたくなった。
    鼻の奥がツンとして、胸のあたりがぎゅうっと締め付けられる。
    いったい何なのかはよくわからなかった。
    僕は固く目を閉じた。
    目が潤むのがわかったけれど涙をこぼしたくなかった。

    突然猫が身体を起こした。
    そうして階段を降りていく。
    どこか寂しく思いながらも、僕も立ち上がって階段の電気を消した。

    猫が振り返って僕を見た。
    まっすぐな二つの瞳が僕をじっと見つめている。
    暗がりの中、白い身体が妙に目立っていた。

    僕は力なくふっと笑うと、猫に背を向けて自分の部屋へと入った。


    ****
    少々長くなりました…すいません。
    久々にお邪魔しましたー。

    2009年04月19日 21:16 by はちや

  • 小さなカフェに入ったら、
    テラス席に明るい金髪の女の子が、一人で座っていた。

    私は、薄暗い店内の隅っこの席に陣取り
    アイスコーヒーをちびちび啜りながら
    テラス席で明るい日差しを浴びている金髪を
    綺麗だなぁと眺めていた。

    彼女は金髪が良く映える
    パープルピンクのパーカーを着ていて
    それが街路樹の新緑と合わさり、
    鮮やかだ。

    綺麗な金色には鮮やかなピンクが似合うんだなぁと
    黒いアイスコーヒーを啜りながら感心した。
    一杯のアイスコーヒーを丁寧に飲む間、そうしてテラス席の
    ツツジの彼女を眺め、気づかれないようにそっと店を出た。

    鼻歌をうたいながら歩いていくと、公園に咲く綺麗なピンクに
    目がとまった。
    緑の葉の中、ツヅジが満開に咲いているのだった。
    その艶やかなピンクが、さっきの女の子のパーカーとお揃いだ。

    いいなぁ、ピンクにあっていいなぁ。
    ピンクって恥ずかしいなぁ。
    でも、あの子は可愛かったなぁ。

    ツヅジを眺めながら、名も知らない女の子を恋しく思った。


    つかのまの憧れ。
    一瞬の恋。

    2009年04月18日 16:17 by e_fyu

  • 桜もそろそろ終わりですねと誰かが言った。

    あたしはそれを、メイプルシロップ入れた
    甘い珈琲を舐めながら聞いていた。

    見上げれば、ひらひら桜の花びらが舞い落ちて来て
    あたしの甘い珈琲の中にひとひら落ちた。

    それを見ていた周りの人が
    ありゃ、これは風流なとかなんとか言ってどっと笑った。

    けどなぁ、そりゃね桜の花びらが
    酒の杯にひとひらだったら風流かもしれないけど
    真っ黒い珈琲だからね。

    そう思ってまじまじと、掌の中の黒い池に浮かぶ
    桜の花びらを眺めた。

    するとそれはひらっと黒い池の中に翻って
    小さな魚になって消えた。

    ああ、これが風流というのなら確かに
    でも、甘い珈琲は飲みたいけど
    桜の魚の入った珈琲は飲みたくないのだった。

    これは桜の悪戯か
    桜の下の珈琲はいけなかったか良かったか。

    ・・・・はぁ。

    2009年04月15日 12:06 by e_fyu

  • 「どうせ沈むのなら、あそこで沈みたい」
     僕の前で、儚げに微笑んだ××は、遠くの方を人差し指で指した。そこは広くて、終わりが無い永遠の地だ。
    「そこは駄目だ」僕は彼女をとめる。「そこから離れたら、君が、どこか遠くに行っちゃうだろ」
    「いいの。遠くに行きたいの。辛い事から解放されたい。我が儘だって解ってはいるけれど、もう、辛いから……だから私をあそ こまで連れて行って?」
     そんな事はできない。ずっと一緒に居た××だからこそ、今も離れては行けないんだ。だからあそこに沈んではいけない。君が 深く深く沈み、消えてしまったら、僕というものもこの世界から消えてしまうだろう。××が居なくなったら僕という存在こそ意味が 無くなるのだから。
    「どうせ沈むのなら僕だ」「私が沈まないと苦しみから解放されない」
     ××は笑った。
    「お願いだから」
     僕は××を強く抱きしめてから、××をおんぶした。彼女はとても軽くて羽でできているようだった。まるで、ぬいぐるみをお んぶしているような感覚。
     ××は僕の首に手を回す。
    「ごめんね?」「……もう、いいよ」「でも、最後だし、我が儘聞いてもらってもいいよね?」「もちろん」
     おんぶしながら、歩く。
     歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて。
     ついたのは闇でも光でもない虚しい場所。
    「ここらへんでいいよね?」
    「ええ」
     ××は僕の背中から降りた。「ありがと」
     そして、

     沈んだ。

     これが僕と××の選択だった。




    http://masirobluesky.blog87.fc2.com/

    2009年04月10日 17:48 by

  • 『ほら、みてごらん、むこうのあさせでみつけたんだよ』
    言葉はすらすらと出てくるようだが、まだぎこちない片言の、ソプラノの声だった。
    少年だ。金色の少年だ。
    顔も名前も朧気だが、印象強かった柔らかな金髪だけははっきりと覚えている。ふわりと潮風に舞う、それ。
    『きみのつめみたいだろう、かわいいだろう』
    本当に綺麗で可愛らしかった。少年は嬉し気に、少女の手に拾ってきたばかりの桜貝をのせ、言った。『くびかざりをつくってあ げる』。
    『かえってきたらつくってあげる。ぜったいにつくってあげるよ。だからたのしみにまっていて』
    待ってるわ。あたし必ず待ってるわ。
    甘く、酸っぱい気持ちで胸がいっぱいになるのがわかる。これは何?
    『あたし大切にする。とても大切にするから、ぜったいにつくってね、おねがいよ』

    “帰ってこい”とは言わなかった。

    『ぜったい。ぜったいよ』
    『うん、ぜったい。ぜったいにつくってあげるから』
    『あたし楽しみにしてるからね、まってるからね、きっとよ、ぜったいよ』
    甘く切なく酸っぱく苦く、胸を占めて離れない、これは何?
    少年は潮風に舞う、少女の絹のような黒髪に手を伸ばし、耳にかけさせると、優しく微笑んで、言った。
    『――だよ、――――だよ、きみが、きみのことが』
    それはなに?波の音がうるさくて聞こえないの。
    それは、一体なぁに?
    甘い甘い、この胸の中の、これはなぁに?

    2009年04月05日 23:36 by

  • 闇。完全なる無明。
    その中を、私はおぼつかない足取りで、ただ前に進んでいる。
    方角も距離も掴めない闇黒の中を、ただ、歩き続けている。

    不思議と、不安や焦りはない。・・・楽しいという感情もないけれど。

    ただ、一つだけ。
    どこから来て。そして、どこに行くのか。
    それが、どうしても思い出せない。

    ・・・どれだけの時間が経ったのだろう。
    気がつけば私は、聳え立つ大きな樹の前で立ち尽くしていた。
    はらはらと舞い落ちる小さな白い花びら。見上げれば、満開のソメイヨシノが、まるで水面に浮かぶ蓮の花のように、ぬばたまの 黒の中に浮かんでいる。

    愁情。螺旋。櫻の葩。

    何かを思い出しかける。けれど、すぐに頭の中は胡乱になる。熱に浮かされたように、櫻の幹に触れる。闇の中の櫻は、まるでつ いさっきまで陽だまりにいたように温かく、優しい手触りがした。

    そうして、私は夢惑う。春に、浚われる。

    2009年04月05日 23:24 by

  •  早春のあずさ

     始発で羽田に飛ぶ。青森は6.7℃。春物の薄いジャケットでも車の中で汗ばむほど。東京は16℃。荷物しょって歩き回ると 暑くてたまらない。
     モノレールから雨のそぼ降る沈んだ景色を眺めていたら、桜の2−3分にほころんだ色が見えた。

     とたんに意識が彼方にひらけた気がした。はるかな気持ちになった。護岸された味気ない水路の端に、桜が1本あるだけで、そ こだけ時間の流れが異なるように、特殊な場がつくられているように見える。

     「あずさ」で松本に向かう。八王子を過ぎた辺りからもう、景色が変わってくる。カラマツ、ナラの冬木立が霧にけぶっている 。遠くの山は青く、暗く、すさまじい形に立ちのぼる雲に巻かれている。リンゴの里で、青森に似た気温かもしれないが、水分の量が 圧倒的に違う。ここらは雨が降るのだ。

     そして真っ白に満開のアンズ、ユスラウメ、桃。ぶどう畑の根元に、レンゲ色に広がるホトケノザ。雲の切れ目に、トンネルの 間に間に、現れては見えなくなる。
     桃源郷をのぞいたような心持ちになった。

    2009年03月31日 12:28 by 笛吹河鳥

  • 「この歌は、本当は最後にこう続くんだ。
    “ただそれだけと誓った願いを破った
     それ以上を求めてしまった
     神の怒りに触れた私を
     貴方はただ抱きしめ泣いた” ……」
    「…“ただそれだけ”、ね……」
    “貴方だけ”でいいと思える気持はとても純粋でとても美しいものだ。だがそれは思うだけだから美しいのであり、現実にそんな 事は不可能だ。求めている内は一途にしても、手に入れたその後は?その後その人はどうなると言うんだ。求めるものが無くなった人 間は?手に入れた至福だけでいつまでも生きていけるというのならそれは人ではないだろう。
    「哀しい、歌だよ」
    何かに言い聞かせるように言った千早は、寂しいような哀しいような表情で弱々しく笑った。そんな千早を横目に、ゆっくりと視 線を上へとあげる。少しずつ視界が空で埋め尽くされ、最終的に身体は柵に凭れていた。
    ―――蒼。
    青過ぎる空が目に鮮やかに映る。痛いぐらいに白く眩しい雲は千切れたような形をして所々に小さく漂っている。太陽は少し傾き かけてきているが、まだ真上と言っていい位置にいる。陽光がダイレクトに目に入ってしまうのを防ぐため目を細め、掌を翳した。
    「―――それでも」
    眩しすぎて目頭が熱くなってきたのを堪え、一面に広がる青から目を逸らさずに口を開く。

    祈るだけでもいい
    願うだけでもいい
    それでもいいから

    「それでも欲しいと思うのは仕方ない事だろ」

              本当に唯、貴方さえ

    顔をおろして、未だ少し俯き加減の千早の横顔を見る。正面から見ても横から見ても、胸糞悪くなるくらい整った顔をした千早。 美しいのは容姿だけではなく、声も、言葉も、人格も。今までに知った中で、こいつを醜いと思う要素は何一つ無かった。

    けれど、何だ?
    美しい千早を汚そうとその背にへばり付いて離れない、その影は一体何なんだ。
    不安なんだよ。
    お前、何でそんなに重そうな顔して笑うんだよ。凄く嫌なのにそれでも綺麗って思っちまうから困ってるんだよ。
    お前、一体何を背負ってこんなとこに居んだよ。

    なぁ、不安なんだよ、千早。



    「そうだね」

    2009年03月30日 20:46 by


  • 首が痛いというと、祖母がエプロンの下から
    竹串ほどもある、大きな針を取り出した。

    その針の大きさと、その派手な花柄飛び散るエプロンの柄に
    絶句していると、父と母が私の両手両足をソファに押さえつけて
    大丈夫すぐすむからと言った。

    ちょっと冗談じゃないし、おばあちゃんは針師でもないし
    そんな大きな針を打たれたら、死んでしまうよ!

    騒いで暴れたけど、大丈夫だいじょうぶと
    小さな子供に無理矢理粉薬でも飲ませる案配で、
    父と母は、薄ら笑いでそんな事を言い続け、
    ワケも判らない恐怖で、私は暴れに暴れたが、
    どうにも無駄な抵抗で、そうしているうちに
    祖母の持つ大きな針は、私の首筋にずぶりと刺さった。

    恐怖のあまり、何も言えずただわなわなと震える私を他所に
    祖母は慎重に針をうずめ、ハッとした顔で私を見ると
    安心おし、蟲は捕まえたよと呟く。

    何を言ってるのかさっぱり解らず、何も言えずただ固まる私を他所に
    祖母は慎重に針を引き抜いた。

    途端に、私の背骨辺りから、何かがずるずると引きずり出される
    薄気味悪い感覚が伝わり、息も吸う事も出来ず
    ただ目をつぶっていると、それはずるずるずるずる、
    すぽりと抜けて、其の途端に
    身体や首の痛みが嘘のようにひいて行った。

    ほら、捕まえたよ見てご覧、とんでもない悪蟲だよと
    祖母が得意げに掲げる瓶の中の生き物は、最後までちゃんと
    見る事はできなかった。


    だって、私は幼い頃から、ムシは苦手なのだ。







    2009年03月29日 17:17 by e_fyu

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