断片小説
短編小説よりさらに短い、というか、小説の体を成してない。
でも、今思いついたシーンを書きたい、そんなことってあるじゃないですか。
そんなあなたの、日の目を見ない物語の欠片を、チラ、と発表してみませんか?
それが面白そうだったら、ブログの小説の方も読んでみようか、と思われるかも知れませんよ!
2007年09月21日 16:46 by 石瀬醒
<マグカップ割れた>
愛用のマグカップが、床に落ちて
割ってしまったとき、あなたは何を考えるだろう?
やっちゃったな
床の掃除大変
ああどうしよう
なんか縁起がわるい感じ
嫌な予感。
がっかり
あーあ・・・
暗い事ぐじゃぐじゃ
愛用のマグカップが、床に落ちて
割れてしまったとき
あ、割れちゃったなぁ、残念。
でもこれで、新しいマグカップを選べる
ってことは、むしろ良い事?
ずっと愛着のあったモノが無くなって
ちょっとさびしいけど、そこにもっと愛せるモノがやってくる
その楽しさの方が大きくなって、
床掃除さえも鼻歌まじりに、すませられるようになれれば良い。
そんな事を、お気に入りのカップを慎重に洗いながら考えていた。
2009年03月27日 18:51 by e_fyu
もそもそと毛布から抜け出ると、
隣に眠る人の寝顔を見つめた。
男のくせに長い睫毛
男のくせに毛穴の無い綺麗な肌。
そんなものをしげしげと見つめた。
カミサマ
カミサマ
もう少しこの人の傍に居させてください
信じても居ない何処かのカミサマにそっと祈った。
ベッドから抜け出すと空気は冷たくて
身震いしながら窓際にうずくまった。
オレンジ色の陽の光が傾きながら自分を照らして
やっぱり惨めな自分は、ただひたすら祈った。
カミサマ
カミサマ
もう少しだけ、もう少しだけ、と。
*******
前回投稿したモノに誤字を見つけて編集したら
投稿順が変わってしまいました。
ごめんなさい。
2009年03月27日 17:28 by e_fyu
一人の男が、家路を急いでいた。
男にあるのは後悔ばかり。
そして、もう誰も待つ者はいないという絶望ばかり。
それでも家路を男は急いでいた。
歩き慣れた道、懐かしい家。
それは変わらず其処にあって、男は震える手で
家の鍵を開けた。
軋んだ扉の向こうは、がらんとした部屋。
奇跡はやはりなくて、誰もいない部屋。
それでも、男は小さくただいま、とつぶやいて
がらんとした部屋の中にすすんだ。
ーーおかえり
乾いたような小さな声に、顔をあげる。
そして気がついた、部屋の壁と言わず天井と言わず
この小さな家が、おびただしい数のノートで覆われている事を。
ノートは、男に向かい一斉にかさかさと囁きかける。
おかえり、おかえりオカエリオカエリオカエリなさい
この家で、男をずっと待っていた想いは、
わずかの歓喜とおびただしい狂気で、今。
男にどっと雪崩落ちてゆく。
2009年03月27日 17:23 by e_fyu
「見て分かりませんか。絶賛、激怒中です」
サツキはそう言って、人差し指を立てた両手をこめかみに当てる。
「鬼の形相に見えませんか?」
2009年03月27日 00:55 by 榊原くじら
あなたが立ち止まるのなら。
あなたが時間を止めてしまうのなら。
あなたが生きることを放棄するのなら。
私はあなたと共に、いつまでもここに留まり続けよう。
あなたが歩き続けるのなら。
あなたが時計の針を進めてしまうのなら。
あなたが明日を生きようとするのなら。
私はあなたと共に、新しい何かを探し続けよう。
けれど
あなたが後ろを振り返るのなら。
あなたが過去に囚われるのなら。
あなたが昔日の思い出に生きようとするのなら。
私はあなたを許さない。
憶えておいて、カイ。
あなたが過去に生の意味を見出すのなら。
あなたがあなた自身以外のものに心奪われるのなら。
私が、あなたを
噛み砕く。
新連載の小説の予告(もう書き始めてるけど)です。
2009年03月23日 10:21 by 稿人形
春の夜というのは、出歩くのに一番良い季節だと思う。
暑くなく、寒くなく、それに夜には忌々しい花粉を
気にしなくても良い。
春の夜に外を歩くのは、柔らかな布の中を
ゆっくり歩くのに似ている。
息もツマらない、重くもない
ふわりふわり柔らかな空気が身体に纏いつき
その柔らかさに、余計に嬉しくなってしまう。
風も冷たくなく強くなく、鬱陶しい暑さも無く
ただ、いたずらに素足を撫でて、通り過ぎてゆくだけだから、
靴さえも、邪魔に思えて、風に撫でて欲しくて
裾が広がるワンピースに、裸足で外に出てしまう。
アスファルトで固められた道路でさえ、
暖かく緩んでいるのは、やはり春の宵にまどろんでいるのか
まだ、固い桜の樹を撫でて、あと一息に膨らんだ蕾に唇を寄せると
すでに微かな香りを漂わせて華やかな花が、薄いコートの蕾の中で
微笑みながら身じろぎをした。
2009年03月20日 11:44 by e_fyu
「如何してあなたは、苦しむような、切ない音で私を呼ぶの。」
一度、いや何度も聞いてみたかった。
「あなたの声は朔太郎の世界の音のようね。
私、嫌いじゃないわ。
ねえ、どうして私を呼ぶの。
私を呼ぶ理由は、なあに。」
ふわり、と白いカーテンが揺れた。
真っ白な世界に、二人を隔てるようにして白い布が降りているのだ。
其れが時折、風に靡く。
その都度、男の顔が少し覗いた。
優しく微笑んでいる。
其処にいるだけで幸せなのだというように笑っている。
「だって、この狂おしいまでの心を伝えたら、君は逃げてしまうだろう。」
だからまだ呼ぶだけで好いんだよ、と男は笑う。
ただそれだけの世界であったなら、どれだけ幸せだっただろう。
2009年03月19日 18:15 by 狩谷ニコ
留められたカーテン、開いた窓。
幼い鼻に零れ落ちた瑞々しい朝の香りと控えめな日光に、+++は目を覚ました。
+
体を起こしてベランダを見ると、良く澄んだ空があった。
大きな欠伸をした僕はベッドを這うようにしておりると、いつも通りの朝に少しの名残も惜しまず階下へ向かった。
頭の中には朝ごはんのこと、ベランダに置いてあった洗濯カゴのこと。
中身が入ったままだったから、ママが途中で放棄したんだ。
何してるのと偉そうに言ってやろう、怒られるかな。階段をおりながら階下のママの声を聞いた。
今朝は機嫌が悪いのかもしれない、様子が変だった。
ぴたぴたと裸足が階段に張り付く音がする。僕はさっきの計画はなしにしようと思いながら、リビングのドアを開けた。
「おはよう」
言って、ぎょっとした。あまりにぎょっとしたものだから、僕は開けたドアを閉めてしまった。
「+++!」
そして更にぎょっとした。ぴたりと閉じたドアの向こうで、ママが僕を呼んだ。
「+++、はいっておいで」
静かに弱々しくドアを開けると、ママは電話を片手にじっとこちらを見据えていた。
一瞬見たママは見間違いではなかったらしい。
後ろ手にドアを閉めて、ぴたぴたと足音をたてながらママに近づくと、ママは震える手で僕の肩を抱き寄せた。
「よく聞いて、+++」
なぁに、と聞くと、ママは電話の向こうにまたあとでと言ったあと、僕に向き直ると、ぎゅっと暖かく抱き締めて、告げた。
暫く意味がわからなかったけど、とうとう堪えきれなくなったのか、ママが僕にすがるようにしてまで更に泣き出したからには、 本当なのだろう。
ああ、こんなに現実味を感じられずにいるのに、泣きたいとはまだ思わないのに、泣きそうともまだ思わないのに、僕はやっぱり 泣きたいみたいだ。ところでママはいつ僕に泣かせてくれるつもりなのだろう。
小さく息を吐いて、僕はママの言葉を頭の中で繰り返していた。
――姉さんが、死んだ。
なんでそんなに丸くなれるんでしょう?
私の隣ですやすや眠っているモノの毛皮を撫でた。
ソレは、片目だけ薄く開けて、さぁね、考えてみなと言った。
なんででしょうと、丸い背中と毛皮の感触を
ゆっくり味わいながら考えた。
其のとき、ソレはクッと後ろ足を伸ばして
ふるると寝息をたてた。
ああ、その形は勾玉に似てる。
でも、似てるからって、なんなんだろう?
やっぱり解らなくて、癪にさわったついでに
ソレの耳をくいっと引っ張ってやった。
うみゃん。
物ともせずに、ソレは気持ち良さげに寝返りをうった。
はぁ、つまりは何にもなぁんにもって事なんだろうな。
2009年03月14日 13:33 by e_fyu
「それで、あいつに『世界を救うためには、人間が絶滅するのが一番手っ取り早い』って言ったら、理解されなくて怒られた。まぁ、 俺もやりたいわけじゃないけど」
「ふーん、面白そうだから、やってみたら?応援してあげるよ」
「なんでまた」
「えーだって・・・別にどーでもいいじゃん。誰が死のうが関係ないよ、俺が死なない限り」
「・・・お前と友達でいることが、空しくなってきた」
「え、なんで?」
「・・・否定されないのも、どうかな・・・と思って」
2009年03月13日 21:37 by のぜ
Copyright(c)1999 FC2, Inc. All Rights Reserved.
@fc2infoさんをフォロー