断片小説
短編小説よりさらに短い、というか、小説の体を成してない。
でも、今思いついたシーンを書きたい、そんなことってあるじゃないですか。
そんなあなたの、日の目を見ない物語の欠片を、チラ、と発表してみませんか?
それが面白そうだったら、ブログの小説の方も読んでみようか、と思われるかも知れませんよ!
2007年09月21日 16:46 by 石瀬醒
「ささ、帰りましょうか。」
「なんで?」
2008年12月09日 23:48 by 涼人(kiro)
「機動準備開始」
「了解。プログラム機動開始。メインカメラ機動。機動を確認した。」
「つづいて、発進準備を開始します。固定アーム取り外し 完了」
「了解。正常に機動」
「カタパルトオープン。発進オールグリーン、どうぞ。」
「キ○・ヤマ○、いきます」
彼は、布団という戦艦から、学校という戦場にいくのであった。
ささくれ左平次
日本橋の裏店、砥師の左平次は、元は武士との噂もある無口な五十がらみの男。
仕事柄荒れた手先からか、その狷介な人柄からか、ついた渾名が「ささくれ左平次」。
尤もこれは表向きで、長屋の連中がそう呼んだのは、酒浸りな左平次の口癖「酒(ささ)くれ、酒くれ」を皮肉ってのことだとい う。
折からの不況で、江戸の町は不穏な空気に満ちていた。
どの藩も財政が悪化すれば、まず考えるのがリストラ。
以前なら数十日の閉門で済んだような事でも、お役御免、家禄減封、お家取り潰しなどの処分を乱発した。
結果江戸には食い扶持を求める浪人が溢れ、喧嘩辻斬りの刃傷沙汰が横行した。
武士ばかりではない、ここ数年は農家の潰れも多く、石川島の人足寄場ももはや一杯だと言う。
不思議なことは、食うに困ったなら食う為だけに罪を犯せばよいのに、男は、特に元藩士旗本の類は、不遇をかこつ身の上にな ると、辻斬り勾引かしの類の一文にもならぬ犯罪に走った。
左平次はその日、得意先に仕上げた刀を届けた帰り、裏店の木戸をくぐる時、ふと目をやった向こうの四つ辻に、すっと身を隠 す人影を見た気がした。
腹の辺りから二本の柄が突き出ていた。武士である。
左平次は、入れ違いに駆け出て行った廻り髪結いおかつの娘、おせんに声をかけた。
「近頃物騒だ、遅くなるんじゃあねえぞ」
日頃口をきかない左平次に声をかけられ驚いたのか、おせんは目をまん丸にしただけで、何も言わずに駆け去って行った。
左平次は、ふん、と鼻を鳴らすと、家に向かった。
2008年12月07日 09:37 by 石瀬醒
「やはり知人が消えてしまうのはさみしいのかもしれない」
『悲しい』とは言えない。悲しむ事なんてできないのだから。悲しむ資格も、涙を流す資格も、自分にはありはしない。
言い換えるなら、『虚しい』。それは文字通り、心に空いた穴。そこは虚無となり何物でも埋める事はできない。
その存在を忘れる事でしか、誤魔化す事もできない。
「そうやってお前は、誰からも捜されずに生きてきて、そしてこれからも」
人間は忘れる。
自己防衛のための切り札。人生最大の敵。
明日目覚めれば、きっと誰も彼女の事を覚えていない。また以前の生活に戻るだろう。『彼女』という存在を忘れて。
記憶は無くなっていく。
本人が忘れている記憶は、『記憶』ではなく『記録』だと言った奴がいたが、たとえそれが記録だとしても、今、彼女が存在する という記録は何処にもない。あったとしても、それはいつか消滅していく。
記憶にしろ、記録にしろ、やはりそれは忘却の対象である事には変わりはないのだから。
「さようなら」
だが、彼は違う。彼は『特別』だから。
忘れるという事ができない。しようとしない。する事を恐れている。
それが彼の自然。自然という存在に反発した『自然』。故に彼は特別。
記憶が記録に変わるだけ。それは確実に彼の中に残る。
仕事をしている時か、誰かと話している時か、本を読んでいる時か。きっと何処かで彼女の存在を思い出す。
それは再開を意味する。
「初めてだ。『さようなら』なんて言ったのは」
だが、それを彼は言わない。だってこれは『さようなら』だ。再開を期待するには、あまりにこの状況にそぐわない。
これは終わり。ある一つの物語の終わり。
それはありふれた、何処にでもありそうな物語。
『初めまして』で始まって、『さようなら』で終わる。そんな物語。
そこにあるのは、月の光と、独りで歩く、少女の姿だけ。
2008年11月21日 23:19 by ArleP
何も聞きたくないと、その女は顔を振った。けれど、耳を塞ごうにも手を縛られているために、何の対処も出来ない。
「・・・それが真実だとして、どうして私たちに何も告げないのよ。ただ、私たちを殺したいだけでしょう!」
愚王と呼ばれる男は、遠くを見るように窓の外を眺めた。女は悲鳴のように言葉を続ける。
「貴方達さえいなければ、争いは起きなかった。貴方さえいなくなれば、戦争は終わるのよ!!」
男はすっと立ち上がり、胸を張った。その威厳に満ちた姿は、どのような服装であれ、正しく、王、皇帝と呼べるものだった。
「私を殺して良いのは、私の民だけだ!!」
女はその威厳に気押され、体を縮ませた。ベッドの中に隠れる少年にまで、空気の冷たさが伝わっていた。
2008年11月16日 19:47 by Liss
「どうしてこうなってしまったのかしら?」
「判っていたことだ。お前は矛で俺は盾。それも最強の、だ。いくら平穏な日々を過ごしても雌雄を決しなければいられないんだ からな。」
「…もし私があなたを好きだって言っても?」
「…当然だ。俺はお前のことが好きだが今戦おうとしている。」
「! サラッと言わないでよ、バカ!」
「決着はつける。その後運よく生き残れたら俺と付き合ってくれ。」
「はあ、なんて告白してくれるのよ?…いいわ。ただし、私が勝ったらひどいんだからね。」
「…負けたときは自決する。」
「させないわよ。…さあ、いくわよ。」
「ああ、受けて立つぜ!」
2008年11月16日 18:47 by MCFL
足元がすっかり黒くなっていくのがわかった。
すとんっ、と心の奥底にある何かが音を立てて落ちていく。
今まで味わったことのない感情が、一気に襲ってくる。
僕は、それに必死で流されまいと強く拳を握り締めた。
しんしん、と雨が降る夜。小さい頃の僕は雨が静かに降る夜はいつも興奮していた。
それはもちろん性的な興奮ではなく、どうしようもない不安からくる興奮だった。
音もなく降る雨に脅えて、泣いて、喚いて、気持ちが昂ぶった。
あの雨の静けさが僕の中の寂しさを、辛さを呼び覚ましていた。
それとは逆にちっぽけな僕を跡形もなく消し去ってしまいそうな強く叩きつけるような雨のほうが、
僕を救ってくれた気がする。
灰色の空を見上げる僕の傍らで母が歌っていた曲を口ずさむ。
名前の分からない思い出の曲を。
2008年11月16日 16:42 by 八智
「彼は電話が鳴った時掃除機をかけていた」
「汚れていたんだ」
「電話は母からだった」
「何の用だ」
「母は10万を振り込むように彼に言った」
「詐欺だ」
「しかしそこはドイチュランド」
「悲劇だ」
「彼はすぐさま10万ユーロと1ユーロ振り込んだ」
「莫大だ」
「彼は破産してしまった」
「気の毒だ」
「おしまい」
「おしまい」
2008年11月13日 17:57 by わかめのミルクセーキ
「ハッピーエンド、本当にそんなものがあると思うの?」
「…え?」
私の希望を根底から否定する酷薄な響きに言葉がでない。
「人の終わり、エンドはいつだって“死”で締め括られる。それは万物共通の大原則であり、覆ることのない絶対の心理。」
「それは…」
「ならばハッピーエンドとは、死する瞬間に幸福であることであり、その過程での幸せはあくまで“イベント”でしかない。そう は思わない?」
確かに、私はハッピーエンドを望んだ。でもこんなのは違う。そんな後ろ向きな願いじゃない。それなのに納得してしまっている 自分がいる。彼女の言葉を認めてしまっている私がいた。
「あなたはなぜ終わりを望むの?」
「へ?」
だから不思議そうに尋ねる彼女の言葉が理解できなかった。彼女は困ったように微笑み、それはさっきまでの冷たいものではなか った。
「その人生が幸福であったかどうかは終わりの時を迎えない限り誰にも分からない。だから私たちは終わりを考えて今を生きる必 要はなくて、今という時をただ楽しめばいいんじゃないかしら?そうすれば、きっとすべてが終わったときハッピーエンドを迎えるこ とができると、私は思っているわ。」
私はずっと間違えていたんだ。余命があまりないと宣言されて絶望して、辛くて苦しくて寂しくて、物語みたいなハッピーエンド が迎えられたらいいなと思っていた。でも違ったんだ。彼女のいう通り、終わりのために生きるなんておかしい。終わり良ければすべ て良し、でも人生はその過程にどれだけの幸福があったかによってこそ思い出は美しく輝くのだから。だから私は、前を向いていこう と思う。
「ありがとう、ございます。」
名前も知らない彼女は夕日を背に去っていく。私はその背中にお辞儀をして逆方向へと駆け出す。まずは私の思いを打ち明けよう 。私の幸せな時間はずっと彼と共にあったのだから。
2008年11月12日 22:16 by MCFL
太陽が西に傾き始めて,2つの影ものびてくる。
昼間にはうだるような暑さを放ってた
コンクリートの地面も,幾分か冷めて8月とは思えない涼しい風が髪の間をすり抜
ける。
あなたはあたしの,あたしはあなたの歩調に合わせて夕日を背にして歩いていく。
周りには,2人を邪魔するものは何もなくて,たまに横を猫が通ったり,頭上をカラ
スが渡ったりするだけで,聴こえるのは2つの足音だけ。
あたしの右手には,あなたの左手が重なっていて,時折握り返されて指と指がから
んでいく。強く握られる度に,手に腕に肩に全身にあなたを感じる事ができる。
あなたを1人占めできる大切な時はあっという間で,終わって欲しくないという想
いはうらはらに,1歩1歩踏み出す度に,あなたとの別れの時間が近づいていく。
もうお別れ。そう言って,あなたはあたしの目を見つめる。
愛おしそうに,軽く目を細めてあたしを見つめる瞳は,あなたはあたしを愛してく
れてるのかと実感できる。
そうして,2人の時間が終わってしまう瞬間,あたしとあなたの影は重なり,夕日に
よって伸びた2つの影は大きな1つの影になる。
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