断片小説
短編小説よりさらに短い、というか、小説の体を成してない。
でも、今思いついたシーンを書きたい、そんなことってあるじゃないですか。
そんなあなたの、日の目を見ない物語の欠片を、チラ、と発表してみませんか?
それが面白そうだったら、ブログの小説の方も読んでみようか、と思われるかも知れませんよ!
2007年09月21日 16:46 by 石瀬醒
そこは、御伽噺に詠われたような、魔女の住む塔ではなかった。
ただ、きっとそれ以上に厄介な場所。最新のセキュリティと、物言わぬコンピュータに管理された、『The Tower』と 呼ばれる現代の城砦。その最上階に、ここのたった一人の住人はいた。
「文明化社会って、単純な暴力には弱いんだね。コンピュータの外側を破壊しちゃえば、それだけだもの。」
驚くほど無機質な部屋の中、たった一人の住人たる『彼女』は、曖昧な笑みを浮かべて振り返る。硝煙の匂いを纏わりつかせた 『彼』は、その姿に驚きを隠せなかった。
黒い髪はやや長いが、それも取り立てて特徴となるほどのものではなく。
黒い瞳は、どこにでもあるようなありふれた色合いで。
その容貌で国を滅ぼすような絶世の美女でもなければ、二目と見れぬような醜女でもなく。
つまりは、あまりにもありふれた、どこにでもいるような女。
これが、『彼』が、その仲間が、躍起になって倒そうとしていた存在、だというのか。
こんなありふれた『彼女』が…。
「お前が・・・・『神』だというのか!?」
『彼』は叫ぶ。否定と肯定、どちらを望んでのものなのか、それは『彼』自身ですらわからない。
「『神』?『創造主』?『超越者』?
…何とでも。きっと、それで間違っていないから。」
そうして、やはり曖昧な笑みを浮かべたまま、『神』であるはずの『彼女』は、両手を大きく広げる。
「私を倒しに来たんでしょう?
私を殺しに来たんでしょう?
好きにすればいい。その手に持った銃で、ここを打ち抜けば、それで終わる。」
そう言って、人間の心臓のある場所を手で示し、『彼女』は言った。
「さあ、私を殺しなさい。」
楽しそうに…嘲るように、哂いながら…。
2008年11月03日 22:02 by 不散木 朔
そこは北海道稚内沖を驀進する海上保安庁海上警備隊・超甲型警備艦<やまと>の昼戦艦橋。
眼前にはソ連の義勇艦隊と『北日本』の赤衛艦隊が展開しています。
それに目がけて<やまと>の十八インチ主砲が六年ぶりに火を噴く。
巨大な炎と轟音、そして黒煙が上甲板で炸裂し、それから一瞬遅れて押し寄せてきた濃密な硝煙の匂いに襲われ、思わずむせ返 りそうになります。そしてそのあまりにも壮絶な光景に何事かを感じてしまい、つい私は大声で叫んでしまうのです。
「四六サンチ!」
それを聞いた艦橋の人々が私に笑みを向けてきます。でもそれは決して冷笑とかの類ではなく、たとえて言えば、大事な玩具を 友達に見せびらかした子どものような笑い。そして艦長の猪口敏平一等海上保安正が、私のほうへ振り返るとこうおっしゃるのです。
「我らが倶楽部へようこそ、高良みゆき」
2008年10月22日 17:37 by 柊☆咲夜
女は泥濘に足を取られながら走る。
自慢の長い髪も汗で顔に張りつき今では忌々しいばかりだ。
血が滲むほど噛み締めた唇の痛みも分からないまま走り続けると、視界が開けた。
そこに立っていたのは悪夢。
男は全身を緋色に染め上げて頭上を仰いでいる。
白い服は最初からその色であったかのように染まりきっていた。
男が見ているのは何なのか。
漆黒の髪が風に舞い上がり男の面を隠してしまう。
目線の先にあるのは虚空なのか
それとも、闇に呑まれそうな朧月だったのか。
男は足元に累々と横たわるものたちには無関心だった。
男にとって部下であり女の上司であったモノたちだ。
痙攣した体、光りを失った瞳が男を睨もうとも存在すら認めようとしない。
恐ろしいほど白い男の面を赤い筋が行く筋も滑っていく。
顎を伝いもう飽和状態の衣服に落ちていく。
細く長い、まるで彫刻のような指先から液体が落ちていく音が聞こえたような気がして女は正気に戻った。
「マスター。お怪我は?」
近づくことも出来ずに女は叫ぶ。まるでそこは不可侵の領域であるかのように。男は視線を緩慢に女に合わせた。
奈落の双眸が女を捉える。
脳天から足先まで突き通すものはなんなのだろう。
「平気」
男はまた虚空を見上げる。
「全部、返り血」
微かに嗤ったようだ。
返り血で紅を引いたように赤い唇で。
女の中に哂いがこみ上げてくる。
ーああ、なんて滑稽なの
戦場に降り立った悪夢に傷の具合を確かめるなんて
2008年09月27日 23:35 by 東雲悠月
あんなに急いでいたはずなのに声をかけるのを躊躇ってしまった。
その横顔はあまりに儚く、綺麗で
――――泣いているように、見えたから
何故だか俺が切なくなって、哀しくなってしまうような。
目の前の少女はひどく緩慢な動作でゆっくりと俺の方を向いた。
伏せられた瞳と瞳がぶつかる。
俺の中の何かが弾ける―――そんな感覚。
この今2人がいる空間だけ、切り取られた別世界。
女々しい気もするが俺の思考回路はそんな感じだ。
そして少女は効果音をつけるなら、ふんわりと微笑んだ。
その形いい唇から俺に向けて声を発した。
「何見てんだよ。見物料取るぞ、聞ーてんのか?」
―――固まった俺を見て少女は嘲笑した。
そして俺は思った。
(・・・詐欺だッ・・・!!!)
(今のお話が終わったらこのお話書くつもりですー・・・)
他のシステム構築会社の社員が束になって何週間かかって解決できない問題を聡は二時間で解決したことがある。いつもアジソンウェ ズレーとからくだ本の分厚い原書を読んでいる聡の持っているのは生物化学の博士号だが、いまやっているのはコンピュータ関連ばか りだ。ソフトとハードに強いだけでなく、身体が小さいから大人が入れないところにもぐり込んで半田付けをやったりもして、クライ アント一同を驚嘆させて帰ってくる。ベンチャーでも立ち上げたらどうですかと真顔で言われたことも一度ではない。
茶色い巻き毛の天使が二人、あなたの手を取って透明な空へ飛行機のように舞い上がる。ももいろ、青、白のふわふわした雲がそば をゆっくり通り抜ける。眼下には、太陽の下、とても白い小さな街が見える。天使とともに高度を下げ、街に近づくにつれ、高い尖塔 とクリスタルガラスをはめ込んだたくさんの窓を持つ、シティー・チャーチ(街の教会)を見分けることができる。シティー・チャー チを、やはり白い、あまり高くない建物が取り囲んでいる。道路と運河があり、その上にはたくさんの人やボートが乗っている。よく ある昔の南欧の都市である。
白い壁、低い建物の間の地面に着陸すると、ほこりが舞い上がる。天使たちはさよならと手を振って、空へ舞い戻って行く。そ して、あなたは歩き始める。道路はくねくねとし、狭くて曲がっており、すべての建物の壁にはひびが入っている。しばらく歩くと、 扉が少しだけ開いたみすぼらしいあばら屋がある。扉の前には、これまたぼろぼろの服を着た近所の人たちが数人、この古い家を覗き 込んでいる。家の中から、非常に生き生きとし、スピード感にあふれた歌が流れ出してくる。あなたはなんだろうと思って、思わずこ の近所の人たちといっしょに、家の中を覗き込んでみる...。
(実は断片じゃなく続きがあります。よかったら遊びにきてください)
崩れかけた粗末な十字架を前にして、私はどのくらい待っただろうか。
二日前から止まぬ雨は、見えない所で私の動力部をじわじわと弱らせていた。
―――まるであの人が泣いているみたいだ。
「どうして、ですか」
答えてくれる声は、今はもうどこにもない。
墓の下に眠る骸だけが唯一の人だったのだから。
「どうして、壊してくれなかったのですか」
雨音に紛れて機械仕掛けの心臓部は小さく唸り、もうこの身体も長くはないのだと無言で訴え続けている。
それでも墓の前から動こうとはしなかった。
どうせ残り少ない寿命ならば、傍にいようと心に決めたのだ。
不意に、冷たい鈍色の手をそっと握ってくれたあの笑顔が思考を止めた。
「寂しい、です…」
握っていた白い桔梗が雨に打たれ凛と揺れる。
一筋の透明な雫が頬を伝い、地面へ滴り落ちた。
その時仰ぎ見た天は、止め処なく涙を流しているように見えた。
「髪、切ってよ」
彼女はそう言って、連絡もなしに突然やってきた。背中まで伸びた彼女の黒い髪が、太陽の光を浴びて艶やかに光っている。
「失恋?」
「ばーか。中学生じゃないんだから」
呆れたように呟いた彼女は長い髪を手で梳いた。
「なんか、鬱陶しくなってさ」
「なら美容室に行けばいいじゃないか」
「面倒くさいもん。君、自分で切ってるんでしょ? 速い、安い、上手い、良いとこだらけじゃない」
巧いこと言った、みたいな顔で、ずかずかと部屋に上がり込む。
鏡を前に、取ってきた椅子に座る。
「綺麗な髪なのに。勿体ない」
遠慮がちに彼女の髪を撫でてみた。細く、柔らかい。ふわりと舞ったシャンプーの香りに、少しドキッとした。
「また伸びるじゃない。雑草と一緒よ」
そんな美しい髪を、彼女は雑草だと宣う。
「変になっても知らないからね」
「大丈夫。その時は坊主にするわ」
彼女の言うことはどこまで本気か分からない。
部屋の奥から髪切り用の鋏を手にする。
「本当に切るよ?」
「くどい。さっさとする」
それを合図に、彼女の髪に鋏を入れた。
切り落とされた髪が、羽が落ちるようにふわふわと揺れ、音もなく床に着地する。
顎の辺りまでバッサリと切ったというのに、彼女は眉一つ動かさない。それを見て、肝が据わった。
勢いよく彼女の髪を切り落としていく。ばさり、ばさりと鋏を入れていく度に、自分が彼女の髪に触れることを許された特別な 存在のように思えてきた。そんなこと言えば「ばーか」と笑われるに違いないので、胸にしまっておこう。
結局、調子に乗り鋏を入れ続けてたら、思いきりショートカットになってしまった。
「うん、さっぱりした。君、才能あるよ」
それでも彼女は満足げに頷きながら、髪の毛をわしゃわしゃと撫で回していた。確かに、ボーイッシュな魅力があるように見え なくもない。きっと、素材が良いのだ。
「美容室代がういた分奢ったげるからさ、出かけようよ」
そのお誘いに、僕は彼女と一緒に部屋の外へと飛び出した。
太陽がぎらぎらと輝いている。痛いほど眩しい夏が、またやってきたのだ。
「今度もまた、お願いしようかな」
太陽に手を伸ばしながら、彼女が言う。
その一言が眩しすぎて、僕は返事が出来なかった。
「おら、口空けろ」
あまり口が大きいとは言えない離凛を慮った量の粥。何だかんだでこうして路蝋が離凛に構うのは長年の事なので、路蝋は元よ り、離凛も見ている侘艶もすっかり慣れ切っている。
「――あ、熱、はふ…美味しい」
「芳野が作ったんだ、当たり前だろ」
「芳野さんの御飯、美味しいものね」
芳野。――父の元部下の妻。現在別居中だが、まだ離婚はしていない。そんな彼女は路蝋や離凛にとって、母のような存在だ。
ヤクザの妻とは思えぬ柔らかな物腰と笑顔で、路蝋が小さい頃から実母に代わって面倒を看ている。侘艶も彼女には気を許して いる。
冷ましながら食べさせるという作業のせいで、粥の減りは遅々としたモノだが、それでも腹が減っていたからか離凛は綺麗に完 食した。
「ふー…美味しかった。芳野さんにそう伝えておいて? 侘艶」
「はいはい、っと。暖かくして寝てろよ、離凛。――あぁそうだ、路蝋」
空になった土鍋を載せた盆を受け取り、最後の「路蝋」という呼び声だけ、侘艶の雰囲気が変わった。真面目な硬い声で呼ばれ 、路蝋は顔を引き締める。
「組長が、本日午後六時に四課と食事会をするそうだ。――路蝋も出席しろと仰っている」
「食事、か…。――六時だな? 了承した」
「格好は制服で構わないと思うけど…着替えるのなら俺も手伝うぞ」
「あぁ、そうだな。制服なんざ着て行ったら無駄にナメられる。無論着替えるさ。――侘艶。お前は?」
「俺はただの護衛役。こっち側の食事は組長と路蝋だけ」
「そうか。じゃあ、今の内にメシ食っておけよ」
「当然。――じゃ、お大事になー」
侘艶が最後に離凛に一言告げ添えて、颯爽と部屋を出る。路蝋も今から準備をしなくてはならなくなったので、このまま離凛に 付き添っている暇は無い。
「じゃあな、離凛。――安静に寝てろよ」
「…行ってらっしゃい、路蝋」
「……そんな顔するな。――メシ食ったらすぐ帰る。それまで大人しくしてろよ」
先程までの穏やかさなど微塵も無い。――しかし、それこそが路蝋の本質だ。彼が離凛に甘いのは、負い目があるからだ。
離凛はそれを知っている。だってあの時、離凛は路蝋が流した涙を見た。――路蝋はそう簡単に泣かない。寧ろ滅多に泣かない 。身内にだって、易々涙を見せた事は無い。その路蝋が涙を見せたのは、あの時一度きりだ。
2008年07月22日 18:26 by 久。
「・・・・・・空、また勝手に僕のプリン食べたでしょ」
テレビの前で細くアザのある腕で自分の足を抱き体育座りの様な格好をしている空の目の前に空になったプリンの容器を突き出す と空はシュンと下を向いて体をゆらゆらと揺らし始めた。
空が体を揺らすのは心が動揺している証拠で、父親に殴られて僕の家に来た時もいつも体をゆらゆらと揺らし声を堪えて泣いてい る。
手の平を額にあて困ったように言い溜息をつくと、空は体を揺らすのを止め、体を反転させ僕の方を向いた。
「ごめんなさい・・・」
7歳児の割にはしゃんとした声できちんと謝ってくる空に少し同情がしてしまう。
普通の7歳児はもっと聞き分けがなくて、もっと僕を苛々させるものなのだが育っている環境が過酷なせいか他の子達よりもキチ ンといていてどこか悲しくなった。
「ん・・・もう良いよ。でも次はちゃんと僕に言ってから食べてね」
空と同じ目線までしゃがみ頭を撫でてやると嬉しそうな顔をしてうんと言い抱き付いてくる。
可愛い可愛い大事な友達。早く君を救ってあげるよ。
「僕と空」の小説一部になる予定のものです。
2008年07月11日 20:45 by 苺ティラミス
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