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物書きの会

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断片小説

短編小説よりさらに短い、というか、小説の体を成してない。
でも、今思いついたシーンを書きたい、そんなことってあるじゃないですか。

そんなあなたの、日の目を見ない物語の欠片を、チラ、と発表してみませんか?

それが面白そうだったら、ブログの小説の方も読んでみようか、と思われるかも知れませんよ!

2007年09月21日 16:46  by 石瀬醒

コメント一覧 252件中、241~250件表示

  •  役不足

    「俺じゃあ、役不足かな。」
    少し眉根を寄せて困ったように微笑むのは、彼がオレに答えを求めている証拠だ。
    そして、彼が、オレになんと答えてほしいのか
    なんとなく分かってしまう自分が少し忌々しかった。

    そんなの、答えは決まっている。
    でも、その前に、彼に言わなくちゃならないコトがある。

    名前を呼ぶ。
    何?と、首を傾げる彼に、言っておくけど、と切り出した。

    「役不足は、ホメ言葉だよ。」

    五秒の沈黙、そして、先に口を開いたのは向こう。
    「…え、マジで?」

    戸惑いを隠せない彼にひとしきり笑った後、
    「俺は適役だと思うんだけどな。」
    彼には絶対に聞き取れないように、口の中で呟いた。

    2007年10月02日 20:39 by

  • 「…え?」
    「いくら優れた力を持とうと、いくら巧みな技を持とうとも。
     肝心な心が腐っていたのでは、その剣に重みは有り得ない」
    「…?」
     レインには、奏が何を言っているのか、全く理解する事が出来なかった。
    「…ま、一種の社会教育だ。
     温室育ちの坊に、世間の厳しさを教えてやろうと思ってな」
     そう言うと再び不敵に微笑み、試合会場へと足を踏み入れる。
     その貌には…、絶対的な自信と、怒りと、僅かな悲しみが顕れていた。
     申し訳ありません、千文字以内にまとめる事ができませんでした。
     コレで終いですのでご容赦を。

    2007年10月01日 23:46 by trickster☆

  • 「…嬢。なんだ、アレは」
     限りなく胡散臭そうなものを見る眼で、奏。
     対するレインは…。
    「この大会の主催者―」
    「…ほぅ、あの歳でか」
     声の主は、どう贔屓目にみても奏と同年代程度の少年だ。この歳でこの規模の大会の主催者とは…。
    「の、ドラ息子。ナルシストと自信過剰の典型みたいな男よ。
     主催者の凰雅宮(おうがのみや)家とは、お父様が懇意にしているから」
    「…ははぁ、成程」
     何処と無く納得した…と言う風情で頷く奏。
    「…嬢、あいつも大会に参加するのか?」
    「そうでしょうね、いっそ清々しいくらいの目立ちたがりだから」
    「決めた。出るぞ」
    「…え?」
    「出ると言った。おい、そこの坊」
    「…それ、僕の事かい?」
     奏の突然の発言に呆けるレイン。
     奏の挑発的な発言に憤る凰雅宮のドラ息子。
    「他に誰が居る? こんな軽い挑発に乗る時点で武士(もののふ)ではあるまい」
     そこでにぃっと不敵に笑い、
    「それにしてもあんた、あんたの一存で大会の参加不参加を決められるなんて…。 随分と偉いんだな?」
    「当然だよ。僕を誰だと…」
    「あぁ、それとも―」
     皆まで言わせず、
    「偉いのは…坊。お前じゃなくて、お前のお父様か。
     …ハハッ」
     一方的に蔑みの視線を投げかける。
    「…なっ!」
    「それでは、お手数ですがエントリーをお願いします。
     登録名は麻生奏(あそう・かなで)です」
     そうとだけ言い、レインの手を引き、その場を辞そうとする。
     その背に、敵意に満ちた声が掛けられた。
    「…必ず、後悔させてやるからな―」
    「吠える前に、この場で俺に掴みかかるくらいの気迫を見せたらどうだ?
     あぁ、無理か。
     それじゃあ、『お前が負けてなかったら』また会おう、『七光り坊』」
     相手方の返事を聞こうともせず、今度こそその場から辞退する。
    「…ねぇ、奏? あいつは確かに七光りのドラ息子だけど、剣道は全国クラスの実力らしいわよ? あんな啖呵切っちゃって大丈 夫?」
    「…はぁ、呆れた」
     …まだ続きます

    2007年10月01日 23:45 by trickster☆

  • trickster☆ と申します。
    「…嬢。だから俺の剣は人を倒す為のものではなく」
    「いいじゃない、奏(かなで)。私、あなたが戦っている所が見たいのよ」
     相も変わらず、横柄な所は姉のセシルに似ても似つかない。セシルよりも流暢な日本語を話せるのだから、日本語を学ぶ過程で 、どうしてもっと丁寧な話し方を学ばなかったのか…、と思い、天を仰ぐ奏。
    「良いとか悪いとかの問題じゃない。
     俺の意思も勿論重要だが、何よりこの大会は『竹刀』を用いた剣道大会だ。俺の獲物は…ほら」
     そう言い、奏はレイン嬢に何処からか取り出した、獲物を掲げてみせる。
     一本は、『不動』とだけ銘打たれた漆黒の小太刀―無論、木刀ではあるが―。
     そしてもう一本は、『明王』と銘打たれた、小太刀と対を成すような造作の、純白の長刀。
    「コレじゃ、参加したくても出来ないだろう?
     ほら、受付の人も困ってる。
     …そんな顔をしても無駄だ。第一、俺が嬢の傍から離れてしまっては本末転倒だろう」
    「難しい言葉の意味は分からないの! いいでしょ、少しくらい!
     別に竹刀の二刀流でも良いじゃない!」
     いつもとなんら変わりない、レインの頑固で我侭な態度。しかし、奏はそこにいつもとは違う『何か』を見出した気がして、ど うしたものかと考えあぐねる。
     …と。
    「別に、僕は構わないよ」
     レインでも奏でもない、第三者からの承諾が下された。

    2007年10月01日 23:43 by trickster☆

  • この街で、一番有名な暗殺者がいた

    その暗殺者は暗殺者らしくなかった。なぜなら表の世界で唯一有名な暗殺者だったからだ。標的だけを確実に殺し、他の奴らに目 撃されても殺さずに去って行った。だが捕まったことや、細かい容姿などは全く不明で。

    その暗殺者は『血髪の死神』と呼ばれていた。

    髪色が血のような真っ赤な色をしていたわけではない、鮮やかな手さばきで殺した数の浴びた返り血からつけられたといわれてい るほど、人を殺していたという比喩だ。
    俺はその暗殺者を誰よりも探している。表の世界から裏の世界に入り込んで、血髪の死神の恐ろしさを知った。
    情報が表と全く一緒なのだ。

    どんな不明な人物でも、裏に入れば入るほど情報は流れるもの…なのに、唖然とした。2年も探して進展がないと判断して、俺は 表の世界に戻った。
    表の世界と全く一緒ならば、俺が表の世界に引きずり込んでやる。どんな手を使ってでも誰よりも偉くなり、何年かかろうともそ の権力で見つけてみせる。多分誰よりも、その死神の情報を俺は持ってるから。

    なぜここまでその死神にこだわっているかだって?敵討ちとかそんな野暮なものじゃない。もっともっと馬鹿な理由さ。
    俺は、一目見たときから、死神の彼女に心を奪われた男なのだから。

    2007年10月01日 09:32 by 燦燦(さんさん)

  • さあ――物語を始めようか。

    ある所にとんでもない美食家がいてね、彼は世界中から珍しい食べ物を取り寄せては、その味に舌鼓を打っていたんだ。
    ところがある日、その美食家は気づいた。
    もう世界には、自分が目新しいと感じられる食材が、一つとして残っていないことに。
    彼は大層悲しんで、三日三晩泣きはらしたそうだ。ちょっと大げさかもしれないけど、それも無理はない。彼にとっては食事こそ が唯一にして最大の娯楽だったのだからね。
    そんな時、悲しみに暮れた彼を見かねた召使(めしつかい)の一人が、ある提案をしたんだ。

    「少し、ゲームをしませんか? 私が、決して貴方様が食べたことがない食材をお持ちします。もしその食材の名前を当てる事が 出来たら貴方様の勝ち。当てる事ができなかったら私の勝ち。その時はもう一度同じ食材を、別の料理にしてお出しします。貴方様が 勝った時が、このゲームの終わりです」

    何せ彼は死のうとしたものでね。もし彼が死んでしまえば、彼に雇われていた者たちは全て路頭に迷ってしまう。召使としては、 何としてもそれは避けたかったんだ。
    そしてその召使は、件(くだん)の食材を調達する為に、町に降りてきた。
    それでね、これは秘密なんだけど、実は僕がその召使なのさ。
    え? 世界中の珍味を食べつくした美食家が食べたことの無いような物が、こんな田舎町にあるような物なのかって?

    あるじゃないか、ほら、



    ――――今、僕の目の前に。



    ざしゅ、ごろん
    鋭い斧の切っ先は柔らかな首筋に吸い込まれ、真赤な噴水が出来ましたとさ。

    2007年09月27日 22:54 by 移利木

  • 「さぁ、祈りなさい」
    あの日、娘は村人たちに請われて、教会に閉じこもった。
    村では戦の炎が燃えさかる。

    時が過ぎた。
    見張りの兵士が食事を運んできても、彼女は口を付けることができなかった。
    どうしているだろう、母は、父は、妹は……そして、愛しいひとは。
    もはや確かめる術などない。
    兵士は教会を見張り、娘はただ、祈るだけ。
    戦の輪廻を断ち切りたくて祈っても、希望を叶える星は遠すぎ、嘆きを聞く海は血に染まりすぎていた。
    祈るだけなのに、祈りの花嫁になることを決められて、ずっと、教会に閉じこもっている。

    それなのに、戦はやんでくれない。
    自分の前の花嫁も、こうして戦の最中に死んでいったと娘は聞いた。
    そして、教会の外から、一際大きな悲鳴が聞こえ、静寂が訪れた。
    そして、娘は初めて、教会の外に出ることを許可された。

    2007年09月27日 22:37 by くれさききとか

  •  まずは一太刀。
     放たれた一発兇弾をその場で振り下ろした刀で左右に受け流し、そこから一蹴りで懐の中へ。下からすくい上げるように兇刃を 動かし銃筒を銃身から切り落とす。
     驚いて、一歩後ろへ下がるがそんなものでは、避けるに値しないし、動き続ける兇刃が停止する理由にはならない。
     さらに斬撃。
     右手を銃ごと切り落とされ、バランスを崩したのか、痛みに耐えられなかったのか後ろに倒れた。
     もちろん受け身などとれず、頭を強く打つ。
     それで、全部。そう、全部全部。
    「っき、貴様」
     まだ頭を打ったのが響いているのか、彼は果敢に二ノ宮に吠える。
    「ウザ」
     珠羽が男を見下ろし、蔑視の視線で見下ろす。
     しかし、見下ろされた男が見ていたのは、彼女の右手のコルトパイソン。
    「ああ、これ?」
     珠羽は黒く光るそれを構える。
    「天使を見せてあげるわ」
     銃声が響く。

    2007年09月27日 00:00 by 榊原くじら

  •  骨伝導
    「裕子さんは減圧室の事故で両耳の鼓膜を破っていた。犯人はそれを知っていた義信さん、貴方です」
    柾木の人差し指が楯原義信の顔を正面から捉えた。
    「裕子さんが聴力を失っていて足音に気付かないと思った貴方は、机に突っ伏して休んでいる裕子さんに無造作に近付いた。
    しかし、裕子さんは貴方の接近に気付き、振向いた。結果、あのような凄惨な現場が生み出されるに至った訳です。
    何故彼女は貴方の接近に気付いたと思います?」
    ここで柾木は、名探偵然としたしたり顔で周囲を見回した。
    「骨伝導ですよ」
    頬骨を指で叩きながら、自ら解答する。
    「彼女の頬骨が、木の机に当っていたのでしょう。それを通じて彼女は、鼓膜なしで貴方の足音を聞き取ることが出来たんです」
    「そ、そんなばかな!」楯原義信が膝から床にくずおれた。

    「すぐに実験して確かめようという人が居なくて良かったよ」
    柾木は、ハンバーガーにぱく付きながら言った。
    「事前にやって見たんだけどさ、机を直接叩けばともかく、足音は骨伝導では聞こえないね。
    彼女が振向いたのは・・・『たまたま』かな」
    私は驚いて彼に尋ねた。
    「じゃあ、なんだってあんなことを言ったんだ?自供させる為のハッタリにもなってないじゃないか」
    口の周りに付いたソースをティッシュで拭き取って柾木が言った。
    「だって、なんかトリックめいた物が欲しいだろ?」

    2007年09月26日 12:05 by 石瀬醒

  • 彼の話。

    K(仮名)は、滅茶苦茶忙しい日々を送っている。
    仕事は当然のこと、プライヴェートでも、誰が見ても、
    彼自身の自由に出来る時間は皆無といっていい。
    精々が…、そう、眠るときくらいだろうか。
    安息の時間は、人間、誰しもに相当するのだろう、と思う。

    そんな折、K本人と話をする機会を得た。
    それほど深い仲というわけでもなく、普段から、それほど交流があるわけでもない。
    そのときは、たまたま、エアポケットのように空いた時間が、
    偶然にも僕のエアポケットと重なった時間に当てはまっただけで、
    それは、まあ、それほど重要ではない。
    貴重だったのは、そのときに一緒に昼食を摂りながら彼から聞いた話のことだ。
    彼は言う。夢の中ですら、現実の様々な雑多な課題が頭を占めて自由にさせてくれないのだと。
    それくらい、本当に、彼は忙しい人種なのだと知ってはいたけれど、
    まさか言葉通りに周囲に拘束されているのだとは思わず、
    僕は相槌を打つのを躊躇うところだった。

    貴重な貴重なエアポケットを僕と過ごした僅かな時間。
    それが彼にとって少しでも安らぎに繋がればいいが。
    そう僕は思うのだが…、けれど。
    彼の口にした言葉を反芻すると、それも無為に思えるのだった。
    彼は言った。つくづく、そう願う、という面持ちで。
    「全く…、夢の中でくらい、ゆっくり眠りたいものだよ」

    2007年09月25日 20:34 by 祐樹一依

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